クリーチャープレイバスケットボール 第二十九章 輪の力 五話

第二十九章 輪の力 五話

 順子がエノアにパスを出して、二秒と経たず、第二クウォーター終了のブザーが鳴る。

 各々、自分たちのベンチに戻っていく。

 「惜しかったぞ、智古。高貴」

 「いやあー。参ったよー。ほんと上手いね、あの四番の選手」

 豪真が拍手をしながら智古たちを出迎えると、智古は、後頭部を軽く摩りながら、笑みで答える。

 「ああ。一本取られたが、まだまだこれからだ。後半も気を引き締めていくぞ!」

 「「はい!」」

 豪真が理亜たちを鼓舞すると、理亜たちはその声に力強く答える。

 「皆さん、お疲れ様です」

 「監督の目から見て、僕たち、勝てますか?」

 穏やかな笑みで、順子たちを出迎える達樹に、少し不安の色を浮かばせるエノアが、控えめに聞いてくる。

 「それは私にも分かりません。神崎さんの率いるチームは、ハッキリ言って強いです。本来、ラフプレーを容認されている試合では、受け側は、間違いなく負けます。しかし、あのチームはそれに打ち破った。八番の選手が一際目立っていましたが、それでもチームあっての勝利です」

 「……そうですか」

 達樹は穏やかな声音で淡々と言うと、エノアが思っていた言葉と違い、少し落ち込んでしまう。

 「ですから、私たちにも勝機があるんです。何故なら、私も含め、皆さんとはチームなのですから」

 「……監督」

 穏やかでいながら、心にある強い闘志を(かも)し出しながら、ハッキリと断言する達樹の言葉に、聖加はホッとした言葉を口にする。

 「任せてくれじゃん! ちゃんと勝ってきて、あのペチャパイ女に一泡吹かせるじゃん!」

 胸を張って、ドヤ顔でそう力強く、口にする静香。

 「はっはっは。頼もしいですね」

 達樹は安心して見ていられた。

 「にしてもあのチームは本当に暖かいな。今まであったチームの中で、本当に良い奴らだぜ」

 順子がおっとりとした目で理亜たちに目を向けると、理亜がそれに気づき、満面の笑みで手を振ってくると、順子も笑みを浮かべ、手を振り返す。

 すると、それに気付いた奏根が「やめんか!」と強い口調で口にしながら、どこからか取り出したハリセンで理亜の頭をシバク。

 「ハハハッ! 本当に面白いな」

 「順子よ。聖加にも言ったが、試合が終わるまでは、そう言う挙動は控えよ。スポーツとは難儀するもの。その経緯は有意義には語れまいて」

 豪快に笑う順子の横で、芙美が言葉で静止させようとする。

 「すまん、すまん」

 それでも笑みを絶えず、笑いながら謝罪する順子。

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