
第二十九章 輪の力 六話
「さて皆さん。あの七番の選手の曲がるカーブは厄介です。仮にダブルディフェンスや、トライアングルツー、で立ち向かっても、容易にあのパスで戦況を変えるでしょう。なので、ディフェンスの対策はもう少し考えさせてください。エノアさん。聖加さん。例のフォーメーションでオフェンスの要になってください。お願いします」
「「はい!」」
達樹がボードと磁石のマグネットで説明していく。エノアと聖加は腹から声を出す。
一方、理亜たちは。
「サイクロンシュートとサイクロンストップが破られた以上、もう出し惜しみは無い。七番が、さっきのシュートを止めた理由は、おそらく、手に負担がかかるからだろう。だから、第三クウォータからは、あのシュートは使わないはずだ。敵のディフェンスやオフェンスを覆すにしても、スクリーンをして、躱させない事だ。ペナルトギアを用いたバスケでは、スクリーンが重要になる」
「そうですね。何せどんなシュートもペナルトギアさえあれば届きますし、それを妨害するスクリーンは必須ですもんね」
豪真が熱心に語っていると、それを納得した加奈は、要因を挙げる。
「それじゃあ、スクリーンはしっかりしながら、オフェンスやディフェンスの有利なポジションを確保すると言う事で」
「「おう!」」
智古がざっくりまとめると、理亜たちは力強く声を上げる。
そして、第三クウォーター開始前のブザーが鳴る。
選手一同は、コートの中央に集まっていく。
「よう。さっきの惜しかったな」
すると、順子が爽やかな面持ちで、智古と高貴にそう言う。
「いやあー。さっきの完敗だったわ。凄いわね貴女」
「はい。お一人で私たち二人係を相手に、同等な力でした」
智古と高貴は、満足気な表情で、順子を称賛する。
「ハハッ。ありがとよ。その調子でもっとぶつかってきてくれ。私たちも本腰が入りやすいってものよ」
ニンマリとした笑みで、そう口にする順子。
すると、智古が「ガンガン飛ばしていくからね」と笑みを浮かべながらそう言うと、高貴も笑みを浮かばせながら頷く。
そして、各々がポジションに着くころには、静香が奏根に対し「ブロックされなかった私のシュートが勝ったじゃん」と満足気にそう言うと、奏根はしかめっ面で怒りを抑えていた。
審判のお兄さんが笛を鳴らしボールを宙に投げつけると、会場中に、第三クウォーター開始のブザーが鳴る。
そのブザーが鳴ると同時に、高貴と順子が高くジャンプする。
三メートルは余裕で飛び、両者とも拮抗するかの様に、ボールを叩きつける。
互いに譲らず、どちらかが、ボールを弾くかと言う瞬間、エノアはサイドラインにまで走り、聖加はスローインラインにまで走り出す。
すると、順子が真正面から叩いていたはずが、急に手を横にし、横に弾き出した。
これには高貴も驚く。
そして、ボールはエノアの居る所に飛んでいくと、その後を追っていた加奈が驚愕する事態に。


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