クリーチャープレイバスケットボール 第二十九章 輪の力 八話

第二十九章 輪の力 八話

 今の劣勢に理亜たちは顔を歪ませる。

 「加奈さん、ゴール下まで、パスを出して貰っていいでしょうか?」

 「え、あ、はい。分かりました」

 能動的な高貴の提案に少し驚く加奈だったが、すぐにすんなりと受け入れた。

 そして、智古が加奈にパスを出すと、加奈がドリブルで走り出す。

 エノアと聖加が、ダブルディフェンスで着こうとしたが、ハーフライン辺りで衝突すると言う場面で、加奈がバックステップし、足がコートに着く寸前、斜め上に向けボールを強く投げる。

 突然の事だけでなく、普通のパスと違い、速力が並ではなかったため、エノアと聖加は加奈のパスをジャンプしてカットする事が出来なかった。

 「やはりあの七番は、ポイントガードとして確立していますね」

 達樹が熱心に加奈をじっと見て、感心していた。

 斜め上に投げられていたボールは、ギュルル、と音を出しながら下に落ちると、高貴の手に渡る。

 そのままゴール下までドリブルする高貴。

 「お、来るか?」

 順子が自分に背を向けている高貴に対し、にやつきながら口にする。

 すると、高貴は右にターンし、ノーフェイクでジャンプシュートしようとした。

 ノーフェイクで来たため、それが順子には、逆に不意をつくシュートとなってしまい、若干遅れてジャンプする。

 しかし、順子の瞬発力は並ではなく、すぐに高貴の所にまで追いついた、

 このままではブロックされてしまう事が、誰しも予想できるような展開。

 だが高貴は、シュートモーションを変えてくる。

 順子の右脇腹あたりに向け、オーバーハンドレイアップシュートをする。

 しかも、普通のオーバーハンドレイアップと違い、かなり強めに投げつける。

 順子は完全に意表を突かれたが、それでもカットしようと、右手の平で、振り向きながらブロックしようとしたが、あまりにも早いオーバーハンドレイアップシュートのボールは若干かする程度だった。

 バックボードのマスに当たり、リングの下に落ちると、わかっかの周りをクルクル激しく回るボール。

 すぐに智古がリバウンド体制に入っていた。

 豪真たちが祈る中、そのボールはギリギリの所でリングの中にスポッと入る。

 観客たちは歓声を上げる。

 「ナイッシュー♪」

 「はい!」

 智古が高貴とハイタッチし、自分たちのコートに戻っていく。

 これで点数は、四十七対四十六。

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