
第二十九章 輪の力 十二話
弾かれたボールは聖加がジャンプして取る。
そこで、ある異変が起きていた。
なんと、サイクロンストップの効果が消え、竜巻が消えていたのだ。
聖加は、これを好機とし、すぐにエノアに高速パスを出す。
しかし、保険としてかけていた、ハーフラインに居る奏根が聖加とエノアの狙いを読むと、聖加とエノアの間に入り込む。
エノアが聖加にパスを出そうと、ボールを叩きつけるかと思ったが、手に取りドリブルして、理亜たちのコートに走り出す。
奏根が、間に居る事で、サイドラインとスローインラインでのパス回しが出来なくなる事を知ると「加奈! ふしだら女! 頼む!」と腹の底から叫ぶ。
奏根は、エノアと聖加のパス回しを防ぐ役に徹しなければいけないため、真っ当なディフェンスが取れないのだ。
それを理解していた加奈は、エノアに向かい、理亜は芙美をマークしながら、聖加の出方を伺う。
「私フリーじゃん」
エノアが加奈のディフェンスに接触する瞬間、勢いよく、静香が理亜たちのフリースローラインにまで走ってきていた。
「くっ!」
奏根は、エノアと聖加がパスを回すことを防ぐ事に集中し、静香がフリーになる確率が上がる事も既知していた。
なので、奏根は耐え切れず、静香のディフェンスに回ろうと、静香に向け走り出す。
すると、エノアはインサイドアウトで右の外側に出ると、すぐにスローインラインに居る聖加に、高速パスを出す。
理亜がヘルプに回り、ブロックしたかったが、芙美がスクリーンをかけ、そうはさせない。
だが理亜は、フィジカルな力で、バックステップすると、右足でコートを強く蹴り、左に移動すると、着地した左足でコートを強く踏み込み、前へ出る。
後ろに居たはずの理亜が、急に消えたかのような感覚に陥った芙美は、一瞬動揺する。
理亜は、そのまま交差するボールに手を伸ばす。
もう少しで手が届きそうな所で、なんと芙美が、前に出てきて、理亜に再びスクリーンをかける。
まさかの出来事に戸惑った理亜は、ぶつかる寸前で留まり、どうしようも出来なかった。
聖加は、迫ってきたボールを、リング近くまで、殴り飛ばす。
そのボールを、静香が空中でキャッチし、そのままダンクで決めた。
これで点数は、四十九対五十。
取られては取り返されると言う展開が続き、そのまま第三クウォータ―が終了する。


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