
第三十章 乱歩 気流 一話
第三クウォータ―が終了して、点数は七十四対七十六。
理亜たちは負けているが、第四クウォーターの事を考えれば、僅差の様なもの。
理亜たちは落ち込んではいなかった。
「皆、この調子で行けば、勝機はある」
「「はい!」」
豪真が熱を込めて、理亜たちを鼓舞すると、理亜たちも気合の入った声で答える。
ベンチに座りながら、スポーツドリンクをがぶ飲みし、理亜たちは戦術を練っていた。
「相手チームの五番と六番の選手の、パス回しからのジャンピングシュートは防ぐ事は出来ましたが、七番の選手をフリーにさせてしまいますね」
「だな。俺は迂闊に動けないし、そうなると、加奈と智古、ふしだら女が、防ぐしかなくなる。高貴は、敵チームのリング下から、こっちのリング下にまで走っても、あの高速パスには追いつけない」
高貴と奏根が模索していると、豪真が「とにかく、あの五番と六番の選手が高速パスからのジャンピングシュートを防ぎ、かつ、七番をフリーにするリスクを補うには、理亜と智古、加奈がディフェンスの要になる」と顎を摘まみながら、悩みごとでも口にするかの様に漠然とした答えしか出なかった。
「ねえ、高貴ちゃんと奏根ちゃんがブロックできないのは、あくまで、あの高速パスを防ぐ時点の事でしょ? だとすると、逆に言えば、奏根ちゃんが中央に居て、五番と六番のパス回しを断つ手段がクリアになれば、奏根ちゃんも七番の選手をフリーにせずに済むわけだし」
智古が汗をタオルで拭きながら、淡々と疑問を口にしていく。
「やっぱりそれがベストですよね。四番の選手のディフェンスが上手すぎて、ファールも誘われるし、そうなると、私と智古さんのサイクロンストップが予防線で、奏根さんが保険としての流れを助長させていますし、この問題を解決しなければ、今の流れのまま、どうなるか分からない展開になってしまいますし」
加奈が暗そうな表情でそう口にする。
「でもさ、そんな逆境の中、私たち点も取れてるよね? みんな深く考えすぎじゃない?」
そこで、理亜は能天気な表情で、カロリーメイトをバクバク食べながら口にする。
「あのなあ、向こうにさらに上の策謀があったら、今度こそ、終わりだぞ」
「つまり?」
「用心しろって言ってんだ! 頭から足の指先までふしだら要素しかないんか! お前は!」
とうとう、頭にきた奏根は、どこから取り出したハリセンで、理亜の頭をシバク。
「いててて、……ねえ、奏根ちゃん、機嫌悪すぎない?」
頭を押さえ、痛がりながら落ち着いた理亜は、小声で加奈にそう口にする。
「私、奏根さんの近くに居たので、よく聞こえてましたが、あの七番の選手に、ペチャパイ女はカカシになってるから今が好機じゃん、とか、ペチャパイ女は胸に栄養がいかないからその分、プレーも短絡的で狂暴なんだ、とか言われてまして、その事で気が立っているかと」
加奈が理亜にこそこそしながら耳打ちすると、理亜は「ブハハハハハッ!」と腹を抱えて大爆笑していた。
それを見た奏根が、瞳孔を全開にし、狂気の目で理亜を睨むと、理亜は、笑うのを止め、額から冷や汗が出た。

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