
第三十章 乱歩・気流 四話
観客たちは怒号の様な歓声を上げる。
これで点数は七十四対七十八。
少し引き離されてしまう。
「今の、どう言う原理?」
理亜が背後を向け、自分のコートに戻る芙美を見てポカンとした面持ちで、奏根に口にする。
「……知らん。お前で何とかしろ」
「んもう! 他人事みたいに!」
流石の奏根も、先程のシュートには、打つて無し、の様な諦めたかの様な面持ちになる。
すると、豪真は、心配するでもなく、不安の様子も微塵も見せず、エンジョーイ・フーー・エンジョー・ビタ! とまたもや謎のオペラ歌手が歌う曲調に合わせるかの様に、悦に入りながら目を閉じ、両手を広げのけぞる。
「だーーー! 敵にそれやられるとマジでウゼーー!」
奏根は頭にきたのか、ツッコみでも入れるかの様な、キレっぷりになる。
そして、高貴が加奈にパスを出すと、すかさず、点を取り返しに行くため、ドリブルして走る加奈。
すぐさま高貴が、敵陣のゴール下にまで走り、智古と奏根が両サイドのスリーポイントラインにまでポジションに着く。
すると、加奈は奏根に向け、片手で投げ、パスを出す。
エノアの横をぶった切るかの様な速力。
それにはエノアも驚く。
奏根に付いていた静香が「そのマッタイラな偽乳みたいに、コートにピッタリくっついてろじゃん!」と意気込んで言いながら奏根の前に出る。
しかし、奏根は冷静なまま「ばーか」と嫌味ったらしく口にすると、そのボールは、右から左に大きく曲がる。
曲がった先は智古にだった。
智古はパスを受け取ると、聖加を抜くため、レッグスルーで左から抜こうと、一瞬飛び出すと、聖加を引き付け、すぐさまフロントチェンジで右から抜く。
そのままドリブルで、ゴール下にまで走る。


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