
第三十章 乱歩・気流 五話
高貴が優位なポジションを確保しようとするが、順子がスクリーンをかけ、そうはさせない。
しかし、高貴は諦めず、空中に向けジャンプする。
それを見た順子は、どうしたらいいのか迷った。
ゴール下で智古を迎え撃つか、高貴の後を追うか。
すると、智古がゴール下でジャンプし、ダンクする構えを取る。
仕方なく順子も飛ぶ。
その時には高貴は、コートの下に着地していた。
そこで智古は、ボールを下に叩きつける様にコートでワンバウンドさせると、その弾みでボールがリング近くにまで跳ね上がると、なんと、高貴がもう一度ジャンプし、空中でボールを掴み、そのままダンクで決めた。
空中から下に降りる際に起きた高貴のプレーは、流石の順子でも止められなかった。
「くっそうー。迷った」
順子は悔しそうにしながら自分たちのコートに戻る高貴と智古を見つめる。
「気にするでない。主も聖加も役割を全うしておる」
「ありがと」
芙美の気に掛ける言葉に、聖加は安堵した面持ちで答えると、順子が「頼むぞエース」とニンマリしながら口にし、芙美の背中を強く叩く。
七十六対七十八。
なんとか逆転したい理亜たちだが、さっきの芙美のプレーが、鮮明に脳裏を過り、どう対処すればいいか分からないでいた。
エノアがすぐさま芙美にパスを出すと、理亜は、ファール擦れ擦れの、きわどいディフェンスをする。
「無駄じゃ。エクストラロードに相対するには、同じく卓越した武士でなければ」
冷徹な目で、芙美が淡々とそう言うと、理亜は「エクストラロード」と目を大きく開かせながら口にする。
理亜は初めて見た、エクストラロードの能力と、芙美の人間離れしたスキルに合点がいった。
そして、芙美は再び、乱歩・気流のスキルを発動し、スリーポイントラインから、ジャンプシュートをする。
そのまま見過ごすことなど出来なかった理亜は、芙美と同じくジャンプする。
完全にブロックする体制だったが、またもやブロックできたはずのボールは、実態があるはずのなのにからぶる。
別の方向から、何故か分からないが、もう一人の芙美が居た。
右側のスリーポイントラインから、すでにジャンプシュートをし終えた芙美。
そのシュートは決まり、七十六対八十一になる。
「どうなってんのこれ?」
「私にも分かりません」
理亜が加奈にそう告げると、加奈も動揺しながら口にする。


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