
第三十一章 ファール? で攻めろ 三話
「え? 由紀子さん?」
「ちょっと、そのハリセンかしな」
「ん? はい」
豪真が一瞬驚く素振りを取ると、由紀子は呆れたかのように、豪真が手にしていたハリセンを寄こせ、と催促すると、豪真は特に疑う事無く、由紀子にハリセンを渡す。
スパン!
「――いた! 何するんですか⁉」
由紀子はハリセンで豪真の頭をシバクと、豪真は驚愕しながら口にする。
「何だじゃないよ。教え子がピンチって時に、呑気にしてるあんたが悪い。いいからさっさとタイムアウト取りな」
呆れながらそう口にする由紀子に、渋々、タイムアウトを取りに行く豪真。
「ピーー! タイムアウト! シャルトエキゾチック!」
審判のお兄さんが覇気のある声でそう言うと、理亜たちボールで、タイムアウトが取られる。
「うわーー。あれどうなってんの?」
「私にも何が何だか」
理亜が脱帽しているかの様に口にすると、横に居る高貴は、怪訝な面持ちで芙美を見る。
「それで監督、どうしました? やはり対策に対してのタイムアウトですか?」
「え、あ、いやあー。まあー。そのー」
加奈がキョトンとした面持ちでそう口にすると、豪真は頭がこんがらかってる来る様な表情で口にする。
「い、いいかみんな」
そこで、豪真が気合を入れ直して、理亜たちの注目を集める。
理亜たちは大量の汗を流しながらも、真剣な面持ちで聞こうとしていた。
だが、由紀子だけが仏頂面で見届けている。
「……頑張れ!」
豪真が勢いよくそう言いながらガッツポーズをすると、全員、ズッコケる。
「あのな監督、そんな言葉で、あの八番を止められるわけないだろ」
奏根のもっともな言葉に、呆れながら頷く理亜たち。
豪真はと言うと、理亜たちから目を逸らし、渋い面持ちで沈思黙考する様な素振りを取る。
「たく、見てらんないね」
そこで由紀子が大きな溜息を吐いて口にすると、理亜が「豪真さん、この人は?」と怪訝な面持ちで口にする。
「あ、ああ。この人は天木さんだ。ちょっと変わり者だが、多分、根は善人な方だと思う」
豪真が少し動揺しながらもそう口にすると、再び、由紀子がハリセンで「あんたに言われたくないよ!」と激を飛ばしながら豪真の頭をシバク。


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