
第三十一章 ファール? で攻めろ 五話
ビーーー!
すると、タイムアウト終了のブザーが鳴る。
「さあ、行ってきな。あんたらの目的が優勝なら、決勝戦までが序の口なんだよ。こんなとこで、躓いてんじゃないよ」
どこか抱擁感のある、優しい笑みになりながら、理亜たちを送り届ける由紀子の言葉に、理亜たちは「「はい!」」と気合十分な言葉でそう言うと、豪真と由紀子に背を向け、コートに戻っていく。
「にしても、なんでかねえ?」
「ん? 何がです?」
由紀子が儚げな声音で豪真にそう聞く。
「今を生きる子供の背中は、いや、人間の背中は、こんなにも眩しいのかって、意味さ」
「嫉妬ですか?」
由紀子が慈しむ様に、理亜たちの背中を眺めていると、豪真が眉を顰めながら、控えめに口にすると、由紀子は、手にしていたハリセンで、豪真の頭をシバク。
奏根のハリセンは、しっかりと、由紀子に引き継がれていた。
そんな事はさておき、再び理亜たちボールで、試合が再開される。
加奈がパスを受け取ると、すぐに敵陣コートに向け、ドリブルして走り出す。
そうはさせまいと、エノアと静香がダブルチームで迎え撃つ。
ここぞと言わんばかりのプレッシャーをかけ、ディフェンスをするエノアと静香。
加奈はすぐにフロントチェンジで右手にボールを持ち替え、パスを奏根に渡そうと、近付く。
その間、理亜はマッチアップをしていた芙美にある事をしていた。
それは、審判に見えない様に、芙美のユニフォームの一部に触れようとしていた。
そこで、理亜は気付く。
目の前でパスコースを防ごうとしている、芙美が残像だと言う事を。
それに気付いた理亜は、周囲をくまなく確認し、加奈に近付こうとしていた芙美を発見していた。
「加奈ちゃん! 後ろ!」
「――!」
理亜が決死の声でそう言うと、加奈の細胞が、一瞬にして活発とし、すぐさまロールターンで、芙美の手を躱し、エノアも抜く。
エノアは芙美が近付いてきた事で、大分気が緩んでいたため、その隙に加奈が抜いたのだ。


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