
第三十一章 ファール? で攻めろ 六話
加奈は、すぐに奏根に向けパスを出すと、奏根はすかさず、スリーポイントシュートを打とうとしたその時だった。
静香が既に奏根に近付いていた。
それは奏根も読んでいたため、一度、打つぞと言う、フェイントを入れると、静香は釣られ、跳躍してしまう。
静香は焦っていた。
芙美の乱歩・気流の弱点を見破られた事により、動揺し、フェイントに釣られてしまったのだ。
奏根は、静香がコートに落ちてきたタイミングを見計らい、スリーポイントシュートを打つ。
すると、高貴が順子にスクリーンを必死にかける。
高貴は、先程の様に、右や左にジャンプして舞う順子への対策として、両腕を広げたまま、順子を囲うように伸ばしていた。
流石の順子もどうしようもないかと思ったその時。
順子は後ろに少し下がると、クルリと右に回り、高貴のスクリーンを躱し、前に出ようとしたが、高貴は全神経を背後に居た順子に集中していたため、更に前に出て、再び順子にスクリーンをかける。
順子は打つ手がなく、奏根が打ったボールは見事決まる。
「しゃーー!」
奏根は思わずガッツポーズを取る。
「くー。やられた」
悔しそうにする順子。
でもどこか楽しそうにプレーしている様子だった。
「なるほど、天木さんが……流石の分析力ですね」
ゆっくりお茶でも飲んでいるかのような落ち着き様で口にする達樹。
八十一対八十六。
押されてはいるが、少し、突破口が見えてきた。


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