
第三十一章 ファール? で攻めろ 七話
「芙美さんの乱歩・気流は、幻影を生み出す異能。エクストラロードは体力の消耗が激しいため、もって一クウォーターが限度。ここぞと言うタイミングを見計らわなければなりません」
達樹は芙美たちの体調を気にしながら口にする。
「芙美!」
すぐに順子が芙美にパスを出す。
理亜は、ユニフォームに触れるタイミングを計る。
全身汗まみれで、疲労が蓄積されているのは、なにも芙美だけではない。
疲れているのは理亜たちも同じ。
残り時間、五分三十二秒。
芙美は左サイドのスリーポイントラインから、フェイクなしのジャンプシュートをしようとした。
そこで、理亜は再び、芙美のユニフォームにさり気なく触れる。
すると、すぐに残像だと言う事が分かり、周囲を見ると、右サイドのフリースローラインから、もう一人? の芙美がシュートを打とうとしていた。
すぐさま、右サイドに居る芙美に向かって走り出す理亜。
ほんの僅かではあったが、ジャンプした理亜の左手が、芙美の打ったボールを掠る。
わずかの乱れたシュート。
高貴と智古は、理亜が二人目の芙美のシュートをブロックしに行ったことから、理亜がブロックしに行ったボールが、本物だと判断し、ジャンプしてブロックしようとする。
しかし、順子と聖加が、スクリーンをかけ、身動きが取れなかった。
せめて、リバウンドだけでも、優位なポジションを確保しようと、すぐに気持ちを切り替えたが、高貴だけが、優位なポジションを確保する。
リングに近付いてきたボールは、リングに一度ぶつかり、リングの周りをコロコロと転がっていくと、スポっと入り、決まってしまった。
「うああーー!」
豪真は、ショックだったのか、頭を抱えて、奇怪な動きをする。
上半身をブンブン震わせ、悶々としている様子を見せると、由紀子がハリセンで豪真の頭をシバキ「そんな余裕あるなら分析しな」とげんなりしながら口にする。
「良い線いってるよあの子たち。もっと信じてやりな」
「……そうですね」
由紀子が慰める様に言うと、不安の表情を隠し切れないまま口にする豪真。
点数は八十一対八十八。
追いつけない点差ではない。
それを分かっていた理亜たちは、今まで以上に気合を入れる。
すぐに点を取り返そうと、加奈は、エースである理亜にパスを出す。
その前に理亜は芙美のユニフォームに触れていた。
そこで、目の前の芙美が偽物だと分かる。
パン!
なんと、パスをした加奈のボールは、いつの間にか、理亜の二歩先も歩いていた芙美の手に渡る。
由紀子からもらった助言でも、反応するまでが、どうしても若干遅くなる。
それを理解した理亜は、すぐに芙美に向け走り出す。


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