
第三十二章 エクストラロード対エクストラロード 四話
「我の幻影が感じたのは、言葉には言い表せない、認知の低下じゃ。あれは、そう言う類だと、直感した。そして、もう一つは、奴の異能の範囲じゃ」
「ああ。範囲か。そう言えば、芙美ちゃんのエクストラロ―ドの幻影の範囲は、あってハーフコート、つまり、コートの半分ほどまでだよね」
聖加が、後の会話がスムーズに進むよう、補足する。
「うむ。我のエクストラロードにも、範囲が限られているのと同じく、奴のエクストラロードも同様じゃ。奴の範囲はコートの三分の一程と見た」
「なるほど、その範囲にむやみに近付かず、八番か他の選手がシュートを打った時にでもブロックしに行けば、更に私たちの勝率は上がるかもな」
「オフェンスでも近づかないようにしながら、パスを速く回し続けていく方法も効果的かもじゃん」
順子が握り拳で熱く語ると、既に勝った気でいる静香が、はしゃぎ気味で口にする。
「どうやらタイムアウトを取った私の判断は、間違っていなかったようですね。ありがとうございます。芙美さん」
優しい顔で、そう言う達樹。
「礼を言うにはまだ早々と言えよう。それからすまぬな監督。我のエクストラロードは、もって一クウォーターのみ。早急に断行しておれば、主の精神の負担には、ならなんだ、と言うのに」
少し、浮かない表情で、切なげに口にする芙美。
すると、達樹が変わらず暖かい笑みのまま、こう言う。
「そんな事はありません。いいですか芙美さん。個々の力と言うのは、たかが知れてます。どれだけ有能であっても、天才であっても、どこかで必ず頓挫します。なのでもっと我々を頼ってください。仲間と言うのは、どれだけの天災をも凌駕する可能性を秘めているのですから」
達樹の思いやりのある言葉に、何か明るい光でも見出したかのような面持ちになる芙美は「……行って来る」ときりっとした面持ちで口にすると、コートの中央に戻る。
一方、ダイオンジチームが話している間、理亜たちはと言うと……。
「おーい。ふしだら女」
何故か理亜は、一滴の水分も取らず、汗も拭かず、ただコートを一望していた。
眺めているだけの理亜に、奏根は手を理亜の前で振ったりしたが、まるで無反応。
試しに両方の鼻の穴に、人差し指と中指を軽く突っ込んでも無反応だった。
「駄目だこりゃ」
奏根は、やれやれ、見たいなノリでベンチに座り、スポーツドリンクをがぶ飲みする。


コメント