
第三十二章 エクストラロード対エクストラロード 五話
「エクストラロードの覚醒から、間もないから、意識が定まっていないのだろう。ただ点を取る。それだけが、今の理亜にある」
豪真が、奏根たちに理解してもらうため、補足説明をする。
「あの子には、口元にでもストロー加えさせてやりな。勝手に飲むよ」
理亜の顔を見て、観察していた由紀子が、そう言うと、智古が理亜のスポーツドリンクにストローを入れ、口元に少し触れると、まるで、生後四カ月後の赤ちゃんが、哺乳瓶を加える様な、いきっぷりで口にすると、瞳孔を全開にして無表情のまま、とてつもない勢いで吸っていく。
「うわっ! なんか怖い!」
智古は少し引きつった声でそう口にすると、興味本位で見に来た高貴と加奈。
「こ、これは……若手芸人の方たちが持ちネタでも模索している最中のスランプの芸に近いですね」
「うう~~。これじゃ、同人誌のネタに使えません~」
高貴と加奈の酷評など、理亜の耳にはまるで入っていない。
「みんな、あの八番のエクストラロードは強力だ。おそらくエピッククラスはある」
「エピッククラス?」
豪真が張り詰めた表情でそう口にすると、奏根たちが首を傾げる。
「エクストラロードはレア度がある。コモンがイージー、エピックがレア物と言われている」
「なるほど、それであの八番をどう止めたらいいですか? 私たちにできる事ならなんでもします」
豪真の言葉に、高貴が話を戻し、どう対処したらいいか、指示を聞こうとしていた。
「相手の八番は残像を多数作れる。それに対処するには、こうするんだ」
豪真が真剣な面持ちで、ボードに書かれているコートに、奏根たちの配置を支持する。
「……なるほど。フリースローライン、スリーポイントライン。ハーフラインを、とにかく抑えようと言う事ですね」
「ああ。他の選手も脅威だが、あの八番のシュートを止めるのが最優先事項だ。八番がシュートを打つ可能性のポジションに、お前たちが予め配置していれば。止められる手立てではある」
「へえ、あんたにしては考えてるじゃないか」
豪真の戦術に、由紀子も少しは感心していた。
そして、タイムアウト終了のブザーが鳴る。


コメント