
第三章 懐かしい感覚を置き去りにして 九話
現時点の点数は、理亜が三点で、奏根たちは五点。
奏根たちはあと一点取ればゲームは終了してしまう。
そこで、理亜は窮地に追いやられていたがある秘策を思いついた。
理亜はニヤニヤしながらディフェンスの体制で待ち構えている奏根に目にもの見せるつもりだった。
理亜は全力でドリブルした。
何の迷いもなく、ただ点数を稼ぐための集中力で。
「来たぞ。もう一度サイクロンストップだ!」
高貴と智古が再びサイクロンストップを発動しようとした矢先、なんと理亜は自分のコート場のセンターサークル手前でボールを掴んだまま跳躍した。
サイクロンストップは発動されたものの、その竜巻の上空にまで跳躍してしまった理亜には届かなかった。
「うそ! 何であんなに高く飛べるの⁉」
加奈が驚愕していた。
その高さは二十メートルを超えていた。
高く飛びあがったまま、奏根を宙でごぼう抜きしてしまう理亜。
「待て待て待て! そのままじゃリングを通り過ぎるぞ!」
怪奇現象でも見ているかの様な形相の奏根たち。
理亜は、リングの直線状の位置の真上の高さに到達すると、なんと、ボールを片手でリングの中に向かって全力で投げた。
投げつけられたボールは一直線の角度で、リングの中に叩きつけられた。
そして、理亜はあろうことか、バックボードの上に右足を右に伸ばし、左足を曲げた状態で着地した。
まるで、ヒーロー戦隊の決めポーズの様に。
そして、ボールは床でバウンドし、弾んだボールが下から上に向かってネットを潜り、理亜の位置にまでボールが戻ってくる。
理亜はキリっとした目で、そのボールをバックボードで決めポーズを取っていた状態で片手で取った。
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