
第三十二章 エクストラロード対エクストラロード 七話
エノアがすぐに芙美にパスを出すと、理亜が芙美に近付き、異能を発揮する。
しかし、目の前の芙美には異変などなく、ただドリブルしているだけだった。
理亜は、すぐに辺りを見回すと、右サイドのハーフラインでドリブルして走っている芙美を発見した。
智古が、ハーフラインで、聖加を警戒しながら、待ち構えていた。
芙美が、スリーポイントラインからジャンプし、シュートを打つ構えになる。
智古は、芙美のユニフォームに触れる。
すると、それは正真正銘の芙美だった。
その事に気付くと、急いでジャンプする智古。
智古の方が背が高く、容易に芙美の手まで間に合った。
しかし、芙美はすぐ近くにいる聖加にワンバウンドパスを出す。
初歩的な誘導に乗ってしまった智古だったが、芙美の乱歩・気流の脅威の前では、致し方ない事でもある。
聖加がボールを受け取ると、フリースローラインからシュートを打とうと、ジャンプする。
しかし、聖加にある異変が起きた。
認知の低下だ。
聖加は、フラフラとした足取りになり、その場でボールを持ったまま、立ちつくしてしまう。
そのすぐ背後で、理亜がボールを奪い、敵チームのリングにドリブルして向かって行く。
すぐに、芙美が乱歩・気流で、三人の壁を理亜の前で作る。
三人の芙美は、鬼気迫ったディフェンスをするが、理亜は何の躊躇もなく、芙美を突っ切っていく。
完全に幻影だと言う事がばれていた。
芙美は歯を食いしばり、必死になって理亜を追いかける。
順子とエノアが、理亜の前に立ちはだかるが、理亜の異能の力で成すすべなく、意識が朦朧としているかの様に、突っ立っている事しか出来なかった。
芙美は追いつけないまま、理亜のレイアップシュートは決まる。
液晶パネルの表示が、九十対九十五になる。
残り時間は、二分を切る。
「引くな! 当たってくぞ!」
奏根が、大声で理亜たちに指示を出すと、理亜たちはオールコートで当たる。
エノアは、パスを出したくても出せず、加奈のディフェンスに苦戦していた。
すると、芙美が走って近付きエノアに手を伸ばすと、エノアはパスを静香に渡そうと、フェイクをかけると、すぐさま右サイドに居た芙美にパスを出す。
そこで、理亜が異能を発揮したが、目の前の芙美に変化は無かった。
すぐに残像だと思った理亜は、コートをくまなく見まわす。
すると、芙美がハーフラインにまで走っていった。


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