
第三十三章 決められるわけもない優劣 二話
残り時間は二十六秒。
そこで、審判のお兄さんがタイムアウトを取る。
タイムアウトを取ったのはダイオンジチームだった。
クリプバのルールでは、一クウォータ、二回のタイムアウトを取る事が出来る。
「皆さんすいません。私が迂闊でした」
「そんな、監督は何も悪くありませんよ」
達樹が戻ってきた順子たちに少し悔しそうに口にすると、聖加が首を横に振る。
芙美たちも同じ思い。
「まさか、あの八番の選手が、プレー以外でも同じ異能を使えるとは……。オフェンスだけと勝手に思い込んでいた私の判断ミスです」
「監督。私たちどうしたら勝てるじゃん?」
達樹が眉をしかめながら口にしていくと、少し消沈気味な静香が口を開く。
「あの異能の効果範囲は、芙美さんが言ったように、コートの三分の一程度です。なので、こちらのオフェンスだけでなく、ディフェンスでも早い動きが要求されます。あの八番の選手からとにかく離れてプレーしてください」
「「はい!」」
達樹の真剣な言葉に、合理的な判断だと思った順子たちは力強く返事をする。
そこで、芙美が達樹に近付く。
「すまぬ監督。我の異能では、どうやらあの八番の女子に太刀打ちできそうにはない。それが今の我の心根じゃ」
「大丈夫です。こういう時こそ、仲間を頼ってください。先程聖加さんにパスを出したのは適切な判断でした。あそこでそのままシュートを打っていたら、防がれてましたからね」
「うむ。皆、忝いが、我に力を貸してくれ」
「おう! 任せろ!」
「「うん!」」
達樹から受け取った優しい言の葉に、芙美は微笑みながら頷くと、すぐに順子たちに振り向き、頭を下げた。
それを見た、順子たちは驚く事も無く、仲間の姿勢を初めから全て受け入れているかの様に、暖かく受け入れる。
一方、理亜たちは。
「「ぶはははっ!」」
奏根たちはと言うと、黙ってコートを汗だくで見つめていた、理亜の顔を弄り遊んでいた。
変顔を作る選手権? でも開催する勢い。
「たく、あんたたちは肝が据わっていると言うかなんと言うか」
それを呆れて見ていた由紀子。
「みんな、気は抜くなよ。流れがこちらに傾いてはいるが、残り時間を考えても、向こうが先制する可能性も十分にある」
「もちろん。体力も本当にやばいし、何が起きるか分からないのがスポーツだしね」
豪真が眉を顰め口にすると、智古が呼吸を整えながらも元気よく口にする。
「でも、どうする? あの八番の異能はふしだら女以外には見破れない。俺たちも天木さんからもらった助言で、少しはこの点差を繋いでやるぐらいの働きは出来るけど、正直不安だしな」
液晶パネルを見ながら、不安そうな面持ちになる奏根。
「それに、ダイオンジチームそのものが強いですし、何か手を打たなければならない様な気はしますが、これと言った策もないですし」
加奈も不安に駆られるような面持ちで口にする。


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