クリーチャープレイバスケットボール 第三十三章 決められるわけもない優劣 四話

第三十三章 決められるわけもない優劣 四話

 そこで、高貴と加奈と智古が、闇雲にでもなんでも、蛇の様な動きをする、奇怪なボールの動きを、見切るでもなく、がむしゃらに飛び、ボールを叩きつけようと、跳躍する。

 しかし、それは全て空振り、シズコラシュートは決まる。

 これで点数は九十五対九十七。

 しかも残り時間は六秒。

 「どうします? タイムアウトを取りますか?」

 豪真がおどおどしながら隣でしかめっ面になっている由紀子に聞いてみると。

 「やめときな。さっきも言ったろ。あの子たちを信じてやんな。それに、今が全神経や細胞がここ一番で活発になっている。ここでタイムアウトを取れば、それが絶えるんだよ」

 由紀子はどこか心配した面持ちで口にすると、豪真は「分かりました」と苦渋の決断でもするかのように、覚悟を決めた。

 「すまぬ静香よ。腕を見せてみい」

 「う、うん、いたっ!」

 芙美が静香を憂慮する様に、静香の腕を優しく握り、見てみると、静香の人差し指から手首にかけて、黒みかかっていた。

 静香は思わず、声を出す。

 「……本当にすまぬ。現時点ではお主のシズコラシュートが破られておらず、それにすがるしかなかった。すまぬ、すまぬ」

 芙美は今にでも泣きそうな表情を見せる。

 他のメンバーも同じだ。

 達樹も、奥歯を噛みしめ、悔しそうな表情になる。

 非力な自分が許せないかの様に、そして、静香に手を軽傷させた事を。

 「いいじゃん! いいじゃん! 私も芙美ちゃんに甘えてばっかりだったし、これでもイーブンにならないじゃん!」

 堂々と胸を張って、自信満々に口にする静香を見て、心が救われた気持ちになった芙美。

 「少し、語弊があるぞ」

 芙美はおっとりとした面持ちで指摘するが静香はニンマリ笑い続ける。

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