
第三十三章 決められるわけもない優劣 五話
「残りのスタミナを考えても延長戦は避けよう! この残り時間で決めるぞ!」
「「おおぉーー!」」
奏根の適切な判断に、声を揃えて声を上げる理亜たち。
残り六秒で、この形勢を逆転できるのだろうか?
すぐに加奈がパスを出そうとしたが、静香とエノアが死に物狂いでディフェンスをしてくる。
残り五秒。
「加奈ちゃん!」
そこで、パスを貰いに智古が加奈の前に出る。
加奈はバックステップし、エノアと静香の間に向け、ボールを強く投げる。
投げた先は聖加だったが、そのボールは曲がって智古に渡る。
聖加がディフェンスしようと、智古に突っ込もうとするが、智古はフリースローラインから、後ろに向けパスを出す。
出した先は奏根だった。
奏根はスリーポイントラインからノーフェイクでシュートモーションに入る。
「させないじゃん!」
そこへ、静香が走って向かい、奏根をブロックしようと跳躍する。
奏根は、防がれる事を予測し、すぐさまジャンプした状態で、左に居る理亜にパスを出す。
しかし、目の前には、五人の芙美が居た。
「出し惜しみは無い」
冷静な目でそう語る芙美。
理亜は異能を発揮した。
だが、目の前の五人の芙美には変化は無かった。
間違いなく残像、だと言う事を確信した理亜は、スリーポイントラインからジャンプしようとした。
しかし、横から六人目の芙美が現れて、ジャンプした瞬間、芙美が理亜のボールをカットする。
理亜は一驚する。
達樹が、居ても立っても居られない様な面持ちで立ち上がる。
「これで終焉だ」
芙美は、弾んでいたボールを手にすると、なんと、芙美たちのコートのスリーポイントラインから、理亜たちのリングに向かい、ボールを放り投げようとする。
「しまった! 宙にボールが浮いている間も、時間はカウントされる! あの八番の狙いは、残り時間でシュートを決めようとすることじゃない! 時間切れを狙っているのか!」
豪真も、せわしない様な面持ちで、立ち上がりながら語気を強める。
そして、芙美がボールを投げようとしたその時、芙美は意識がぼんやりとし始めた。
理亜は異能を発揮していた。

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