
第三十三章 決められるわけもない優劣 六話
「くっ!」
芙美は、歯を食いしばりながら、理亜の異能に抗い、理亜たちのリングに向け渾身の思いでボールを投げつける。
「よし!」
順子が勝利を確信したかのように、思わず声を上げる。
だが、そこで、勇士が現れた。
「理亜さん!」
なんと、高貴が、宙に飛んでいて、芙美が投げつけたボールを強く平手打ちする。
平手打ちにした先は、順子たちのリング。
それには、芙美たちも驚愕する。
理亜は、信じていた。
誰かがカットしてくれることを。
理亜は、スリーポイントラインからジャンプし、高貴が平手打ちしたボールの先へ、同時に移動する。
高い!
あまりにも高すぎる跳躍。
バックボードの高さは、優位に超えている。
「いけ! ふしだら女!」
「「いけーーー!!」」
皆の思いが込められた一人の少女。
これはもう決めるしかない。
「させるかーー!」
そこへ、順子がブロックしようとジャンプする。
なんと、この土壇場で、順子は理亜の高さに迫るジャンプをする。
あついもの同士が込めたオフェンスとディフェンス。
「はああーーーー!」
残り一秒を切る。
ビーーーー!
タイムアップと同時に、理亜の手には戻ってきたボールが握られていた。
エンド・オブ・ジャスティス
決まったのか?
そして、審判のお兄さんが、片手を大きく上げると、下に叩きつける様に下げる。
液晶パネルの表示が、九十八対九十七になる。
「……や、や」
「「やったああーーー!」」
理亜たちは大喜びした。
まさに奇跡的の大逆転勝利。
「ふうー。やれやれ、こんな年寄りに、肝を冷やさせるんじゃないよ」
由紀子は安堵すると、優しい笑みで口にする。
「よしっ! よしっ! よしっ!」
豪真は嬉しさのあまり、何度もガッツポーズをする。
「はあー。負けちまったな」
順子は肩をガックシ落とし、消沈した声音で口にする。
先程、理亜のシュートをブロックしようとした順子だったが、一歩、理亜の高さにまで届く事が出来ず、シュートを許してしまったのだ。
「うっ、うっ、うっ」
静香は悔しさのあまり、大粒の涙を流していた。
「……ほら、静香ちゃん。整列♪」
そこへ、エノアが静香に近付き、満面の笑みで手を差し伸べる。
エノアも泣きたいほど悔しかったが、涙を押し殺し、仲間のために笑顔でふるまう選択をした。


コメント