
第三十四章 網羅聖のトップ現る 一話
そして、びっくりドンキーで宴会をして、シャルトエキゾチックチームとダイオンジチームの仲は深まった。
芙美はやはり未だに恥ずかしくて、人の目を気にしながら食事をしていると、理亜が、芙美に気さくに明るく、フレンドリーに話しかけ続け、芙美の心の糸が徐々に緩んでいく。
芙美も自然と理亜に話す事が出来て、自然と打ち解けあっていた。
奏根たちも、静香たちと打ち解けあい、まるで、昔からの親友の様な仲にまで発展した。
「達樹さんたちのチームも、やはり、あの連続強姦まがいの事件に巻き込まれたんですか?」
豪真が食事の席で、気になっていた事を、深刻な面持ちで聞いてみる。
「ええ。あの子たちもその被害者です。当時、私が滝川高校のバスケの外部顧問とダイオンジチームの監督を務めていた頃です。あの悲惨な事件の被害者だった順子さんたちは、滝川高校のバスケ部だったんです。手足を失い、途方に暮れていた順子さんたちが、クリプバに付いて私から教えた所、大変興味を持ち、ペナルトギアの義手や義足を付け、今回の大会にエントリーしたんです」
「……そうだったんですね」
どこか暗い表情でありながらも、前向きな姿勢で話す達樹に、豪真は胸が締め付けられそうな感覚になる。
理亜と似たような境遇。
それは、理亜自身も聞かなくても、何となく察しがついていて、ダイオンジチームがほっとけない、掛け替えのない存在に思えたのだろう。
だからこそ、明るく接する事が出来、奏根たちも同じくもてなす。
順子たちも、言葉で言わなくても、似たような境遇だと言う事は、既に実感していた。
「ですので、あの子たちは光を見つけたんです。バスケのさらなる可能性を見つける事が出来た、と言って、毎日の様に熱く語り合っています」
「……良いチームですね。バスケが好きで、情にも熱い。そう言う選手が居てこそ、競技と言うのは盛り上がりますし」
「はっはっはっ。ですね」
達樹と豪真は、少し、しんみりしながら切なげな瞳で、理亜たちを見る。
成長を見守ると言うのは、どこか寂しい気持ちもあるのだろう。
一同は食べ終え、帰る支度をしようとしていた所、理亜が何の前触れもなく、「チロルに行きたい!」と満面の笑みで言うと、「いいねいいね! 行こ行こ!」とエノアも満面の笑みで賛同する。
豪真は大きな溜息を吐いて、仕方なく引率役と、金銭の支出役を買う羽目になってしまう。
シャルトエキゾチックとダイオンジのメンバーは別々のバンの車でチロルのある歌志内へ向かう事に。


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