
第三十四章 網羅聖のトップ現る 二話
「着いた――♪」
「温泉何て久しぶりじゃん♪」
理亜と静香が意気投合しながら、チロルの湯の暖簾をくぐる。
「じゃあ後でな」
「うん、監督たちもゆっくりしてってねー♪」
男女別々の暖簾をくぐる前に、豪真が何気なく一声かけると、智古は元気よく頷く。
「私、温泉は幼少期に父と母に連れられて以来、来てませんでした」
「あー。私もそうだ」
「私たちぐらいの年頃の女の子ぐらいになると、親とくる機会は減りますしね」
高貴が、ふと思いつく様に口にすると、順子も上を見ながら何かに気付いたように口にする。
加奈が淡々とした声音で、理由をある程度、明確にする。
「恥ずかしい訳じゃないんですけど、なんか、温泉となると乗り気になれないと言うかなんと言うか、不思議な感覚なんだよねー」
聖加が上着と下着を脱いで、共感するように話す。
「ぐぬぬぬぬっ」
そこで、聖加の、たわわに実った胸を、親の仇の様に見ていた奏根が、何か言いたげだった。
「え? どうしたの?」
「ふぬぬぬっ」
聖加が全裸でキョトンとした面持ちで口にすると、奏根は未だ脱がず、悔しそうにしながら、聖加をじっと見る。
「ほら。ペチャパイ女も脱ぐじゃん」
「言われなくたって――なっ、なんだと」
そこで、静香が全裸姿で奏根にだるそうに口にすると、奏根は怒りを押さえつけながら振り向く。
すると、奏根が目にしたのは、エノア、静香、芙美が、Fカップはあると言う事実。
その隠れ巨乳と言う衝撃的な事実に、落雷でも頭に食らったかの様な驚き方をする奏根。
「ほらほら、奏根ちゃんも脱いで脱いで。後は奏根ちゃんだけだよ」
理亜が奏根を急かす。
「い、いや、お前らは先行ってれよ。俺は後から行くから……」
かなり控えめな声のトーンで遠慮しがちに言う奏根に、理亜と静香、順子はニヤリと笑う。
「こうなったらやる事は一つだな」
「「うん」」
順子が意気揚々と口にすると、嬉しそうな表情で頷く理亜と静香。
「かかれーーー!」
「うわあああーー! やめてくれーー!」
順子が指揮し、理亜と静香に奏根の服を脱がせかかると、奏根はたまらず絶叫する。
そして……。
「「ブハハハハハハッ!!」」
「く、くうーー」
奏根の裸体の胸? を見て、大爆笑する、理亜、静香、順子。
あまりの腹の痛さにその場で倒れ込む。
「お、お腹痛い。フフッ、アハハハハッ!」
「まごう事なき絶壁じゃん! 毎日のプロテインの飲みすぎの代償じゃん!」
「フフフフッ、お前の身体はとことん裏切らないな」
理亜たちは、目に涙を浮かばせながら、笑っていた。
あまりのインパクトに、笑い死になる所だった。
奏根は、恥ずかしさと悔しさで頭がどうにかなるのを堪え、ただ、顔を赤面させる事ぐらいしか出来なかった。
「奏根よ。プロテインは控えよ。未成熟の内から呑むと、身体に影響が出る。その、分かるじゃろ。もう手遅れかもしれんが」
芙美が奏根の方に手を優しく置き、これまた切ない表情で、優しく声をかける。
「俺はプロテインの飲みすぎでマッタイラになったんじゃねーー! 遺伝みたいなもんだーー! それにプロテイン呑んだからって誰がペチャパイになるか―――!」
やけくそになりながら、喚き散らす奏根だった。


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