クリーチャープレイバスケットボール 第三十四章 網羅聖のトップ現る 四話

第三十四章 網羅聖のトップ現る 四話

  体や髪も洗い終え、いざ入浴へ。

 「よかったじゃんぺちゃぱい女。その胸がお湯で隠れて♪」

 「お前はいい加減、俺の胸から離れろ! それからその呼び名も止めろ!」

 またもやギャグマンガのノリになる静香と奏根だった。

 一方その頃。

 一等地の網羅聖のビルでは、ある話をしていた。

 「どうだったかねスフィア。実の姉の試合を見た感想は?」

 銅羅が椅子にもたれながら、優雅に話を振る。

 「正直驚いた。まさか、ペナルトギアを装着しただけで、あれ程の人外レベルの身体能力を見せつけるとは」

 明人は驚きを隠し切れない様子で口にする。

 「君の姉はバスケットプレイヤーとしての素質も高い。だからこそ、ペナルトギアは、彼女の様な人間にこそ相応しい。持って生まれた才能には、それに比肩する神具でなければね」

 「不謹慎だ。姉さんは足を切断されたんだぞ」

 銅羅は優しい音色でも出すかの様な声音だったが、それに怒りを買った明人は、銅羅を睨みつける。

 「失言だったね。今のは忘れてくれ。それより昨日、飲食店の経営者を殺してくれた事、礼を言わせてくれ。よくやってくれたよ」

 「……俺はただ、約束を守っただけだ」

 銅羅は詫びを入れる様な素振りは見せず、話題を切り替えると、明人は少し俯き、暗い表情になる。

 「そんなに罪悪感に蝕まれる必要はない。あの男は、裏で裏社会の人間と通じて、麻薬を売買していた。それだけに飽き足らず、自分が経営している飲食店の飲料や食事に、麻薬を混ぜ、意識が混濁している客から金を巻き上げ、挙句、見た事も聞いた事も無い書類にサインを書かせ、女性は風俗に、男性は人体実験のモルモットとして扱っていた。相応の裁きを君が下した。ただそれだけだ」

 「……」

 銅羅はどこか不快感を匂わせる言葉を口にするが、明人は俯いたままだった。

 すると、何者かが、銅羅の居るオフィスに入ってきた。

 「取り込み中の所悪いけど、客よ」

 ノックもせず、どこかいけ好かない空気で入ってきたのは、一人の四十台の女性。

 おでこをオープンとしたロングの茶髪に、熱い口紅。

 ミニスカの制服を着て、四十代には見えない程、美しい女性。

 「どうなされました……(もう)()社長」

 銅羅が少しうんざりする様な素振りを取るが、それとはお構いなく、ズカズカとした大胆な足取りで、銅羅に近付いていく、網羅(もうら)祥子(しょうこ)

 なんと祥子は、網羅の妻でもあり、網羅聖の社長でもあった。

 「どうもこうもないわ。ただくぎを刺しに来ただけよ。最近、クリプバだけでなく、網羅聖の仕事にも従順すぎるあんたにね。あんたがいくら吠えたり努力しても、私の座には座れない。ただそれを言いに来ただけなの」

 祥子は、どこか敵意を感じさせる口ぶりだった。

 「それからね、私の意思であんたの名前、地位、家族も全て決まってるのよ。忘れないで頂戴。私はあんたの主人であって、生殺与奪を握っていると言う事もね」

 銅羅の近くにまで歩み寄り、鋭い眼光を近づけながら重々しく口にする祥子。

 「重々承知していますよ。ですが名前まで持ち出されるとは思いませんでしたが。私は名などに興味はないと言うのに」

 パン!

 すると、祥子は何か逆鱗にでも触れたかのように怒ると、銅羅の頬を強く叩く。

 「それじゃなに? 私は名前程度で吠えている女だとでも言いたいの⁉ 分をわきまえろ! この低レベルなチクショーが!」

 別人になり果てたかのように、キチガイになる祥子、

 その目はどす黒く、殺意に満ちていた。

 明人は、その様子を睨みつける様にして見ていた。

 「あら、スフィア。相変わらずいい男ね。どう? 今夜私の部屋に来ない?」

 激怒してた表情から一変して、艶笑な笑みで明人に迫る祥子。

 「興味はない」

 「相変わらずつれないわね。この際だから貴方にも教えてあげる」

 明人は、凄みを利かせるみたいな威圧した目を祥子に向けるが、祥子は怯みもせず、少し不機嫌になり、銅羅のオフィスにある水槽に向かって行く。

 「貴方たちは私に生かされている。それが貴方たちにとって絶対。ここまで言われたらわかるわよね?」

 祥子は冷たい冷気を帯びた目を銅羅達に向けると、ポケットから小さな包みを取り出し、水槽の中に向ける。

 すると、上から白い粉が水槽の中に入っていくと、水槽の中で元気に泳いでいたアクアリウムたちが、ピタリと止まり、浮上していく。

 ヒレをピクリともさせず、死んでしまった。

 死んだ事を確認した祥子は、殺意的な目を明人たちに向ける。

 「この魚の様に私に飼われているの。生か死か選びなさい。私が与えてあげるから」

 不敵な笑みでそう言うと、その後は一言も喋らず銅羅のオフィスを去っていく祥子だった。

 銅羅と明人は怯えはしなかったが、祥子の脅威性に危機感を持っていた。

 あの女狐をこのまま跋扈させては危険だ。と、銅羅は心の内で思い詰めていた。

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