クリーチャープレイバスケットボール 第三十五章 毒牙 二話

第三十五章 毒牙 二話

 「どう言う意味です?」

 「確か豪真さんは、これが初のクリーチャープレイバスケットボールの監督ですよね?」

 「え、ええ」

 動揺する豪真に、眉一つ動かさず口にする達樹。

 「えっ! 豪真さんそうだったんですか?」

 「あ、ああ」

 加奈が意表でも突かれたかの様に驚くと、豪真は少し動揺しながら答える。

 「豪真さんならお分かりだと思いますが、クリプバには莫大なお金と、主に自民党の政治家たちが何人か絡んでいて庇護を受けてるのです。その分、運営委員会は肝を冷やすのです。何故なら落胆された分、クリプバの秘密が露見される可能性がある。見限らないのは、言い換えれば、気に入られてる分、闇のゲームと言う舞台を黙認され、敢えてグレーゾーンとして扱われる。警察も渋々承認しているのがその証拠です。仮に世間に公になれば、間違いなく、クリプバは潰されます。一般人にとって、ギャンブルと同じく、違法行為だと言う依存性がある危険な競技だと思われるでしょう。ですので、運営委員会会長兼、アサルトハイドチームの監督、富芽銅羅さんは、相当なプレッシャーがかかっているはずです」

 「ふむふむ」

 達樹がお茶に映る自分を見つめながら口にしていくと、静香は何度も首を縦に振る。

 「少しでも寄せられた期待を裏切らないためにも、クリプバをよりよく盛り上げようとします。そのためには手段を択ばない。冷静に見えていますが、内心、焦燥しているはずです。その証拠に、この前のアサルトハイドチームの試合のVTRを拝見しましたが、あの選手たちのプレーには覚悟が見受けられました。ただ楽しくプレーしたい、勝ちたいとは違う何かが。ゼルチャートンソンチームも似た覚悟がありましたが、あれとは別物です。銅羅さんにも何か危機感の様なものが感じられましたし」

 達樹の分析を聞いていた理亜たちは、どこか寂し気な表情をしていた。

 自分たちが知っているバスケとは一線を画する何かがあると言う物悲しさに。

 「なんか、その言い方だと、銅羅って奴が、初めて監督しているように聞こえるけど?」

 順子が思案顔でそう聞く。

 「ええ。そうです。銅羅さんはこれが初めての監督で、大会運営員会会長なんです」

 「「えっ!」」

 達樹の言葉に、理亜ちは驚愕する。

 しかし、豪真だけが、どこか表情が曇っていた。

 「そうだったんですね。僕たち、浮かれていた気分で大会に参加していたのが、何か申し訳ない気がしてきました」

 そこで、エノアが少し俯きながら口にすると、達樹が「良いんですよ。人それぞれです。エノアさんたちに疚しい気持ちがない限り、人はそれを応援し、励まし合う。スポーツはだからこそ情熱が注がれるのです」と暖かい笑みをエノアに向ける。

 「……監督……ありがとうございます」

 「そう言えば昔、スポーツは結果が全てだー。とか言って、俺に突っかかっていた奴がいたな。……ああーー! 思い返しただけでもむかつくぜー―!」

 黄昏る様な面持ちから一変して、激怒する奏根に、静香が「ペチャパイが目に余るから捨て台詞を吐かれただけじゃないの?」とわび入れる気持ちなど毛ほども見せない意地悪な表情を奏根に向ける。

 「んなわけあるかーー! つか勝ったはその試合!」

 顔を真っ赤にして激怒する奏根。

 「とにかく豪真さん。お気を付けを。私の目から見ても、今回のアサルトハイドチ―ムは前回にはない脅威が感じられます。ご武運を」

 「はい。肝に銘じておきます」

 チロルの湯で語り合った、危機意識。

 楽しかったが、それ以上に、気を引き締めなくてはならなかった。

 これから起きる、激闘に向けて。

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