クリーチャープレイバスケットボール 第三十五章 毒牙 四話

第三十五章 毒牙 四話

 「待ってください奏根さん。まだ不審者かどうか決まっては」

 高貴と加奈が慌ただしく後を追う。

 しかし、ここで、善悟と輝美の耳を疑う言葉がする。

 「イヤッホーー!♪」

 「いやあ~青春だね~」

 なんと、理亜は大はしゃぎ、テンションMAXで飛び跳ねる様に善悟たちに近付き、智古に至っては微笑ましい物でも見てるかのように、おっとりとした表情で近付く。

 「こら不審者! 往生せいやーーー!」

 奏根は、目にも止まらぬスピードで、善悟の首に、スリーパーホールドを決める。

 「待て待て! 俺らは警察だ!」

 「何が警察だ! いい年したふたりのおっさんが、仲良く星なんて見てる時点で、十分不審者だろうが!」

 「どう言う道理だよ」

 善悟が苦しそうに訴えるが、奏根は聞く耳持たず、と言う猛進ぷり。

 輝美は呆れうなだれる。

 そして、溜息を一つ吐くと、輝美が「俺たちが警察だってのは本当の事だ」と渋い表情で奏根に警察手帳を見せる。

 すると、奏根は訝しい目で警察手帳をじっと見る。

 「げほっげほっ。たくっ、どうなってんだ今どきのガキんちょは! この状況下でテンションアゲアゲで近付いてくるは、微笑ましく「青春だね~」なんて吞気に口にするは、挙句の果てこんなガキにスリーパーホールド決められるわで散々だぜ」

 善悟は焦燥しながら辟易と口にする。

 「よく見せて」

 「ん? ほら」

 奏根は善悟の言葉など聞いておらず、本物の警察手帳か確かめようと、しかめっ面で警察手帳を手に取り、じっと見る。

 輝美は、なんだこの子供? とかなり奏根を警戒していた。

 理亜たちはハラハラしながら待っていた。

 もし本物の警察官ならまずい状況である。

 「ふん!」

 「「あっ!」」

 すると、奏根は渾身の剛腕で警察手帳を団地の屋根に投げつける。

 輝美と善悟は、まさかの奏根の行動に驚愕する。

 「今だ! 逃げろーー!」

 「「うわあああーー!」」

 奏根の力強い一声に理亜たちは連動でもするかの様に、一心不乱でその場を走り去る。

 すぐに豪真の車に飛び込むと「監督出して! 逮捕される!」と慌ただしく頼み込むと、豪真は、わき目も降らず車を出す。

 「はあぁー。俺の警察手帳が」

 肩をガックシ落とす輝美。

 「どうする? 公務執行妨害として後を追うか?」

 善悟は気怠そうに口にする。

 「いや、いい。ああ言う熱血馬鹿が一人でも多いに越したことはない。この街を思ってやってくれた行動だ。その意思を汲もうぜ」

 どこか初々しい物でも見るかのように儚げな瞳を去っていった奏根たちの帰路を見つめる輝美。

 「やれやれ、お人好しなこって」

 善悟は後頭部をポリポリかいて呆れていた。

 しかし、善悟も思う所はあった。ああ言う情熱のある変人たちが、未来を掴むのだろう、と。そう思わされていた。

 と言うか、そう思わないとやってけないと言うのが本音だ。

 大人はどこまで行っても、消去法で生きていく定めでもあるのだろう。

 こうして、波乱万丈な一日が終わったのだった。

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