
第三十五章 毒牙 六話
「みんなの意見を聞きたいんだけどさ。私は賞金を山分けしていいんじゃないかと思うんだよね」
どこか雲がかかった表情をする理亜に、奏根たちは顔を見合わせ、頬に笑みを浮かべる。
「もちろん、私たちも、分配で良いよ」
「そうです。お金の問題ではありません。やはり協力してくれるなら、それに答える形は必要ですし」
智古と加奈は賛成。
高貴と奏根も「ええ」「だな」と言って賛成してくれた。
「……みんな」
口にしなくても既に心で通じ合っていた事に嬉しくなった理亜は満面の笑みになると、すぐに順子たちと合流する。
「豪真さん。私たちで話し合ったんだけど、やっぱり賞金は山分けする事に決めた」
「……そうか、まあ、お前たちが決めたならそれで良い」
真っ直ぐなその瞳に豪真は穏やかな表情で頷く。
「と言うわけです、達樹さん。それからダイオンジチームの皆。どうぞよろしく」
豪真が振り返り、愉快な気持ちで達樹と順子たちに目を向けると、達樹たちは、少しキョトンとした面持ちで言葉が出てこなかったが、数秒には満面の笑みになる。
「分かりました」
達樹がそう言うと、順子たちは「宜しくお願いします!」と覇気のある声で頭を下げる。
理亜たちも同じように答えると、静香が「まあ、ペチャパイ女には、100億何て大金持たせても、何に使うか気が気じゃないから。私がしっかりと管理しないとじゃん」と自信満々に口にする。
「お前えの見返りは、もやし一袋な」
「もうーー! 何でそうなるじゃん!」
「「アハハハッ」」
眉間に皺をよせ、棒読みで口にする奏根に対し、ぷんすか怒る静香。
理亜たちは腹を抱えて笑う。
そして、すぐに練習が再開された。
練習中、何故か奏根は随分不機嫌だった。
「どしたの奏根ちゃん?」
「うるせーー! どいつもこいつも、ブルンブルン揺らせやがってーー!」
理亜が奏根の顔を覗き込むように心配して聞くと、奏根の不機嫌な理由に、静香が「ペチャパイ女! いつになったら幼稚体系から卒業するじゃん!」と嫌味MAXで口にする。
すると、奏根は激怒し、練習をほっぽって、「ムキ――!」と言いながら静香を追いかけまわす。 理亜たちは大爆笑していた。


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