クリーチャープレイバスケットボール 第三十六章 解放された漆黒の鎖 一話

第三十六章 解放された漆黒の鎖 一話

 そして、次の日、十一月十五日

 冬に入り、早朝はプラス五度を切る時期だった。

 夜には氷点下を下回る。

 その夜に、輝美と善悟は、強姦紛いの連続事件や、心臓を一突きにする事件を追っていた。

 「だめだー。銅羅って奴の名前が割れてから手がかり一つないなんてよ」

 善悟はやる気ゼロで口にする。

 「網羅聖に踏み入るには証拠がなさすぎるし、どうしたもんかな」

 輝美も少し元気がない。

 「なあ、この前の喫茶店のオーナーが殺害された事件も、心臓を一突きにした奴と同一犯の可能性もあるんだよな?」

 「ああ、十中八九な。あの事件はどう見ても類似している。模倣犯の可能性はまずない」

 善悟が上の空で何となく口にした言葉に、眉を顰めて口にする輝美。

 善悟はともかく、輝美はこの事件を解明する事に闘志を燃やしていた。

 理由は明白で、ただ熱血で、曲がった事が嫌いな性格なためでもある。

 善悟は、善人ではあるが、どこか気が抜けている一面もある。

 だが、悪を許さないと言う信念は、輝美と遜色は無い。

 「そして、もう一つ共通点があるとすれば、心臓を一突きにされている被害者たちは、同時に加害者でもある。まあ、こんなことが分かっても、未だに犯人の足掛かりが掴めないのが現状だ。刑事であっても所詮、人間である事を痛感させられるぜ」

 嫌気がさしたみたいに、浮かない表情になる輝美。

 二人は住宅街の付近を歩いていた。

 すると、一人の黒いレインコートを着た女性が両手をポケットに突っ込んだまま横切る。

 時期が時期なため、厚着をしているが、何故か雪すら振っていない状況下でフードを深く被っていた。

 少し、妙に思った前後だが、人見知りの類の人か、ぐらいな気持ちで目をすぐ前に向ける二人。

 すると、暗い夜道の端で、照明灯に充てられたまま、俯せで倒れている女性を発見した輝美と善悟は血の気が引く思いで、急いで駆け付けた。

 「おい! 大丈夫か⁉ しっかりしろ!」

 輝美がその血まみれの女性を両手で抱きかかえながら必死な形相で声をかけ続ける。

 「善悟! 救急車だ!」

 「ああ! 今呼んでる!」

 輝美と善悟は、焦燥しながら最善の手を打とうとしていた。

 「息はあるのか⁉」

 「ああ、微かにだが」

 微かに呼吸をする三十代前後の女性。

 腹部や腕がめった刺しにされ、絶命する一歩手前と言えるほど、出血量が酷い。

 「とにかく止血だ!」

 「待ってろ。今、俺の服で」

 輝美と善悟は自分たちが来ている上着を脱ぎ、ティーシャツを破ると、傷が痛まないように慎重に巻いていく。

ストレキール

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