クリーチャープレイバスケットボール 第三十七章 思わぬ訪問客、理亜、敗れる 二話

第三十七章 思わぬ訪問客、理亜、敗れる 二話

 そして、クリプバ決勝戦三日前。

 理亜たちは練習に精を出していた。

 達樹の死を引きづってはいるが、それでもダイオンジチームの芙美たちは、自身たちを鼓舞し、コートの上で足を着ける。

 「お、良いんじゃないか」

 奏根たちが猛特訓している隅では、理亜は由紀子の猫じゃらしを掴もうと必死だった。

 目を塞がれた状態で、少しづつ感覚が研ぎ澄まされ、もう少しと言う所で、由紀子がコートの床で振るう猫じゃらしを捕まえる所まで来ていた。

 「そこだ!」

 「お!」

 等々、掴んだ猫じゃらし。

 理亜は別に闇雲に手を出していたのではなく、確信があって手を伸ばしていた。

 「よし、それじゃ布を取ってみな」

 「え? うん」

 由紀子がニンマリとした面持ちで口にすると、暗闇から解放された理亜。

 しばらく闇に潜んでいたから、やたら眩しいのでは? と思っていた理亜だったが、意外と光が眩しくなかった。

 だがそれ以上に何か違っていた。

 それは、ペナルトギアと一体となった感覚が、確かに感じ、それは試合で土壇場で使っていたエクストラロードと全く同じ感覚だった。

 「ねえ、由紀子さん。これって」

 「ああ。せっかくだから試してみな」

 どこか唖然としている理亜に対し、由紀子が自分を親指で指さし、理亜にエクストラロードを使ってみろ、と催促する。

 理亜は感覚を研ぎ澄ませた状態で、脳内で念じた。

 相手の意識にシンクロする様にして、深い海の底まで引きづりこむ様なイメージを浮かばせる理亜。

 すると、由紀子が一点だけ見て動かなくなった。

 ためしに由紀子の前で手を振ってみるが、由紀子は無反応だった。

 そこで、理亜は感覚を少し緩めると、由紀子は我に返ったかのような表情をすると、ニヤリと笑いだす。

 「どうやら上手くいったようだね。それがあんたのエクストラロード。バーチャルディメンションだ」

 「バーチャルディメンション?」

 由紀子がキッパリと口にする言葉に首を傾げる理亜。

 「ああ。意識を操り幻影の様に投影し、分類、整理する事も出来なくもないとも言える。それぐらい未来のある異能、て事さ」

 ドヤ顔でビシッと口にする由紀子に対し、目をキラキラと光らせる理亜。

 「……バーチャルディメンション」

 「ほら、あの子たちと混じってきな。決勝が終わるまで気を抜くんじゃないよ」

 「ハイ!」

 由紀子が理亜の背中を叩き急かすと、理亜は気合十分と言った感じの返事をする。

 「理亜。お前はこれから時速三十キロのペースで三時間走ってもらうぞ。その後、スリーオンスリーだ」

 「うげーー!」

 豪真が容赦なくそう言うと、理亜はたまらずうなだれる。

 練習後、理亜たちは虫の息になり、一歩も歩けなかったので、理亜たちの家族を砂川体育センターの外にまで集まってもらい、バーベキューをする事にした。

 日頃、お世話になっている豪真に、何か祝ってあげたいと思っていた理亜たちは、いつかサプライズプレゼンントを送りたいと思っていた。

 その日の夜、帰ってきた理亜は疲れながらもお風呂に入り、汗を流すと、あるテレビにご熱中だった。

 いつか自分も、と言う思いを胸に、今日もベットで寝る理亜だった。

 何のテレビを見ていたのかは、理亜の生き様を目にする日が来れば分かるだろう。

【@nifty光】

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