
第三十七章 思わぬ訪問客、理亜、敗れる 三話
そして、次の日。
理亜たちは最後の調整をしていた。
各々が新たなスキルを身に付け。
「全員集合!」
豪真が練習が終わる時間帯を見計らい、大きい声を上げる。
理亜たちは汗だくになりながらも横に並ぶ。
「みんな、明日が等々クリプバを締めくくる日だ。悔いの残らない様、全てを出しきれ」
「「はい!」」
豪真の激励に答える理亜たち。
いつしか由紀子は姿を消していた事に後で気付いた理亜たち。
理亜たちは帰る支度をすると、コートを出ようとしたその時だった。
「お疲れ様です」
「――ん?」
そこで、一人の女性が不意に現れ、意表を突かれる理亜たち。
気品ある顔立ちに、白髪で赤い瞳をした女性。
「誰?」
「さあ?」
理亜たちは誰だか分らなかったが、奏根と豪真だけは知っていた。
「あ、確か、クリプバの相手決める時、クジ引きで居た」
「ああ。アサルトハイドチームのキャプテンだ」
「「えっ⁉」」
奏根と豪真の訝しい声音に、一驚する理亜たち。
しかし、芙美だけは凛々しい面持ちのまま、その女性に近付く。
「久しいな。イリアス・メルシー」
「お久しぶりですね」
芙美はまるで、好敵手にでも再開したかのような、態度だが、意にも返さないイリアス。
「芙美ちゃんは面識があるの?」
「うむ。二年前、滝川高校でのバスケでの試合後、不意に外で話しかけられ、一ОN一を持ち掛けられ対戦した事がある」
「それで、勝敗は?」
「……我の惨敗で終わった」
「えっ! 芙美ちゃんが、惨敗」
芙美が悔しそうに口にすると、全員が驚愕する。
「十点差で惨敗とは少々、大仰ですよ。それにお互い、ペナルトギアを装着していない時期でしたし、今、芙美さんがエクストラロードで私に対抗すれば、昔の様な結果にはならないと思います」
淡々と口にするイリアス。
しかし、芙美は、本当に昔の様な、苦虫を嚙み潰したような思いにならないのか、甚だ疑問ではあった。
「本当ならリベンジマッチと行きたい所だが、主は理亜に用があるのであろう?」
「ええ。その通りです。芙美さんとの再戦は、明日、また。その時を楽しみにしております」
芙美は少し熱が冷めたかのように、口にすると、イリアスは、礼儀良く口にする。
てっきり理亜たちは、アサルトハイドチームは礼儀のなっていない無法者集団、見たいなイメージがあったが、どうやら偏見だったようだ、と考えを改める。
「突然で申し訳ありませんが、理亜さん。私と一ON一で勝負していただけませんか?」
「え?」
手を前で組、頭を下げるイリアス。
それに対し、理亜はどうしたら良いのか分からず、豪真の顔を見る。


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