クリーチャープレイバスケットボール 第三十七章   思わぬ訪問客、理亜、敗れる 四話

第三十七章 思わぬ訪問客、理亜、敗れる 四話

 「まあ、形は違うにせよ、お互いを知るにはいい機会じゃないのか。私は構わないぞ」

 豪真からの許可も貰うと、闘志を宿す理亜。

 「よし! やろう!」

 「お疲れのところ申し訳ありません このお礼は、明日の試合で必ず」

 「私たち、勝つけどね」

 「ふふ。愚直な方ですね」

 既に、目だけでバチバチに言い争う理亜とイリアス。

 「監督よ。ここで理亜が敗北すれば、明日の試合に影響が出ないか、我は些か不安なのだが」

 「君の思う気持ちも最もだ。だが、これが思わぬ誤算になるかもしれない。一種の賭けだな」

 芙美と豪真が不安の種を目にしているかのようにしていたが、ここで覚悟を決めるしかない、と自分に言い聞かせ、見届ける事に。

 奏根たちも、不安の思いで見る。

 栄光を掴み続けてきたアサルトハイドチームのキャプテンの実力は如何に。

 「そっちが先にオフェンスで良いよ」

 「そうですか。では遠慮なく」

 理亜が譲ると、軽く了承したイリアス。

 イリアスは服を脱ぎ、ティーシャツ姿になる。

 ティーシャツには四番の印が背中と胸あたりに付いている。

 高鳴る鼓動に耳を傾ける理亜。

 練習試合の様なものだが、これから決勝戦を戦う相手との対決は、どこか不気味で、妙な緊張感を感じる理亜。

 深く深呼吸をすると、イリアスが理亜にパスを出し、理亜もイリアスにパスを出す。

 それが一ON一の試合開始の合図。

 イリアスは左下にボールを傾け、理亜に手を出すよう誘導する。

 しかし、理亜は仮にもインターハイ優勝経験のあるエース。

 そう簡単には乗らず、イリアスの全身を観察し、警戒態勢を強める。

 その風格を肌で察したイリアスは、流石だと思い、思わずほくそ笑む。

 すると、右手にボールを持ち替えると、イリアスがドリブル? して抜きにかかる。

 もちろん、理亜は呼応する様に右に身体を動かす。

 しかし、その時。

 パスッ

 「……え?」

 「はっ?」

 理亜はまさかの光景に愕然としていた。

 奏根たちも目を大きく開きながら理亜と似たようなリアクションになる。

 イリアスは、いつの間にか、左サイドからレイアップシュートを決めていた。

 だが、理亜は確実に反応していた。

 イリアスが右サイドからドリブルで抜きにかかるのを確かに目にし、右に身体を移動させた。

 その直後に、イリアスは消えていて、いつの間にか、左サイドからレイアップシュートを決めていた。

 「ねえ、今の何?」

 「分からない」

 エノアが信じられない物でも見たかの様に、呆気に取られて口にすると、順子も困惑気味だった。

 「エクストラロードかな?」

 「それしかないんじゃないんですか」

 聖加の最もと思える言葉に、相槌を打つ加奈。

 「何か勘違いしているみたいですが、今のスキルはエクストラロードによるものではありません。ましてや私はペナルトギアすら稼働させていないのですから」

 「「えっ⁉」」

 イリアスが涼しい口調で語ると、理亜たちは一驚する。

 「そんな、事が」

 高貴が思わず、こぼす様に口にする。

 理亜も呆然として見ていたが、顔をブンブン横に振り、気持ちを切り替えオフェンスに集中する。

 キリッとした鋭い目でどこから抜くか、考えての行動ではなく、本能的な行動で、素早く右に手にしていたボールを左に持ち替え、左から抜きにかかる理亜。

 すると、イリアスは左斜め後ろに下がる。

 ある程度ペースを作り、オフェンスを誘いやすくし、理亜からボロを出させようと言う魂胆。

 理亜は思い切ってスリーポイントシュートを打とうと、ボールを持って跳躍しようとしたその時。

 パン!

 「――⁉」

 なんと、ボールを両手で握っていたにも関わらず、跳躍しようとしたその時、ボールをカットされた。

 イリアスはボールを手に取ると、ドリブルでハーフラインにまで戻り、オフェンスに切り替える。

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