
第四章 新たなる仲間 四話
そして、無事に検査が終わり異常がない事がわかり、理亜はホッと胸を撫で下ろす。
「よし。問題なしだ」
「ありがとう。豪真さん。じゃあ奏根ちゃんの家に行こう」
元気いっぱいの理亜。
「少し待ってくれ。先に動画を取っておきたい」
「え? 動画? 何の動画?」
すると、豪真が診察室にカメラとスタンドを持ってくる。
スタンドの上にカメラを固定させ、さらにテーブルと二つの椅子を持ってくる。
理亜は一体、何をするのか分からずキョトンとした面持ち。
「これからyoutube配信をするんだ。出演者は私一人だ」
「えっ⁉ そうなの?」
「少しの間、静かにしていてくれ」
「分かった」
豪真のお願いに、承諾した理亜。
理亜は少し離れた場所で待機した。
すると、豪真が録画ボタンを押そうとした時、突如、豪真の体から、黒い縦模様のマークが身体を覆う。
それを見た理亜は、豪真もペナルトギアを付けた人だと言う事が分かった。
そして、録画ボタンを押した豪真は、高速で椅子にまで移動し、何やら誰も居ない相手に目を向け語りだした。
「最近、どうも身体の調子が悪いんだ。毎日、健康的に生きているつもりなのに、理由がさっぱりなんだ」
どこか欧米人見たいな手振り素振りをする豪真。
すると、高速スピードで患者側から医師側にチェンジするかのように反対側に立ち威厳ある面持ちになる豪真。
「疲労が重なると倦怠感を起こすのは必然です。なのでこれを飲めば大丈夫」
すると、豪真が懐から怪しい箱を取り出した。
どうやら錠剤が入った箱の様だ。
しかし、その箱が余りにも胡散臭く見える。
ラベルには、この特効薬は貴方の安全を保障します。さあ、生と死の狭間で藻掻き苦しむ時代はもう終わりだ、と訳の分からない文面がかかれていた。
そして、箱を患者側のテーブルの上に置き、すぐさま患者側に回り、役に徹する豪真。
「うわあ! 凄いや! これで僕の未来も安泰だ!」
理亜は何の説明もされていないのにあそこまで喜ぶ役をやっている、と思うと、ちょっと詐欺っぽく思えた。
そして、医師役に戻る豪真。
「この薬はバイ・ヒロウ・バイ。成分にタンパク質、ビタミン、ミネラル、bカロテン、ニコチン、あ、いや間違えた。リコピンを配合したスペシャル錠剤だ。さあ、貴方もこれを飲んで、レッツフレキシブル!」
患者に説明するかのように意気揚々として途中まで説明すると、カメラの方に身体を向け、スマイルで親指を立てる豪真。
理亜は開いた口が塞がらない様な素っ頓狂な表情で固まっていた。
そして、録画ボタンを高速移動で止める豪真。
「どうだった? 私の配信は?」
豪真が誇らしげな笑みで理亜に近付いてくる。
「うん、えーと、もう、どこからツッコんでいいのか分かんないや」
最初は困惑気味の理亜だったが、開き直るかのように最後は笑い出した。
「ん? そうか。まあ何にせよ、これでまた広告料が入る」
内心、ハイテンションな豪真はルンルン気分でカメラやスタンドを片付ける。
「ねえ豪真さん。ちなみにyoutubeのチャンネル登録者数は何人なの?」
「そうだな。三人だ」
「えっ! 三人⁉ じゃあ広告料貰える規定値に達しないんじゃ?」
「それがだな。視聴者数だけは軽く十万人を超える」
「何それ!」
豪真がせっせと片付けながら驚愕な事ばかり口にしてしまうものだから、理亜は気持ちの整理が追い付かない様な感じになる。
「実はだな。何故か私のチャンネルにはアンチが多く、炎上商法なんて呼ばれているんだ」
「ああ。何となく分かるかも」
ちょうど、片付け終えた豪真が口を真一文字にして納得いかない様子で理亜に近付いていく。
理亜は少し斜め下に顔を向けぼそりと呟く様に言う。
「何か言ったか?」
「――いやいや何でもないよ! それより豪真さん。早く奏根ちゃんの家にいこ♪ 私お腹ペコペコだよ」
首を傾げてくる豪真に対し慌てながら話題をぶぅきらぼうに逸らす理亜。
「そうだな。もう午後の一時を回っているし、行くとするか」
「うん!」
豪真と理亜は笑顔で会話しながら豪真のレンタカーで奏根の家に向かうのだった。
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