
第三十九章 やばい奴ら 三話
「これより、シャルトエキゾチックチーム対アサルトハイドチームの対戦を始めます!」
「「宜しくお願いします!」」
「「うおおおぉぉーー!」」
審判のお兄さんが、声高らかと宣言すると、理亜たちは深々と頭を下げる。
観客たちは、等々始まる決勝戦に歓喜の声を上げる。
「ねえねえ君たち」
「ん? はい?」
ポジションに着くかと思われたアサルトハイドチームのメンバーの一人、十三番の木佐が声をかけてくると、理亜たちは首を傾げる。
木佐はどこかはしゃぎ気味だった。
少しハイになっている状態。
「君たちはさ、この国をどう思う?」
「……え?」
木佐は清々しい挙動で両腕を広げ、堂々としていた。
バスケとは百八十度も関係なさそうな話に、思わず間抜けな声を出す理亜。
「いや、どうって言われても」
そこで、奏根がどうしたら良いものか悩みながらも答えようとする、
中々真面目な質問のため、無下にできなかった。
「僕は他の国から見たら豊かで活気のある国だと思うよ。僕の母親はイタリア人だけど、そんな外国から移住してきた母でも、住みやすくていい国だって言ってるし」
「えっ⁉ エノアちゃんて、ハーフだったの⁉」
「いや、そこは名前で気付けよ」
理亜の間抜けたリアクションに奏根がぼやく様にツッコむ。
「君たちもその選手と同じ意見なわけ?」
「うん、私たちも住みやすい国だと思うよ」
木佐が確認のため聞いてみると、聖加が代表してそう答える。
「フン、浅はかな」
「え⁉ な、なにが?」
すると、まるで潮笑いでもするかのように鼻で笑う木佐。
それに対し、理亜は動揺する。
「この国が豊? 住みやすい? 答えはノーだ! いいか、この国はおもてなしや和の心で一目置かれてる国と言われはしてるが、それはこの国の人間の半分にも満たない平和主義者の素行が招いた結果だ。大多数は傍若無人に闊歩する。その最先端を歩くのが政治家たちだ。己の欲と利益、金にしか目がいかない、夢想家の無能集団。奴らが模範となっている例など、吐いて捨てるほどいる。殺人、虐め、強盗などの犯罪などの横行は絶えないのも、模範となってしまっている政治家たちがいるせいだ」
両腕を組み、熱い眼差しで熱弁する木佐。
「そ、それでバスケと何の関係が?」
順子が少し引きつった顔で聞く。
「大ありだ! 優勝賞金が百億も出る大会なんてあってはならない! 私はここから這い上がり、権力と名誉を手に入れた次第にでも、政治家の道に進むつもりだ! 無論、優勝賞金百億は、全額寄付する!」
「「おおーー!」」
パチパチパチ。
木佐が思わずガッツポーズを取り、声高々と宣言すると、理亜たちは感心して拍手をする。
「だが、もう一つ今の質問で確かめたい事もあった」
「それは?」
気障っぽく後ろを向き顔だけを横に向ける木佐の言葉に、キョトンとした面持ちになる理亜。
「お前らの人間性を疑っていると言う事だ。上澄みを掬った答弁。闇を視認しようともしない無邪気で無垢な子供。そう、つまらんのだお前らが。だから言った。浅はかだと。そんな人間に、私がバスケで後れを取る事は無い」
捨て台詞でも吐く様にして、自分のポジションに着く木佐を、ホゲーとした間の抜けた面持ちで見送る理亜たち。
「凄い、志が高い人と言うか、なんと言うか」
苦笑いするぐらいしか出来なかった理亜。
しかし、奏根は「フン。理念や思想なんてもんはな、他人が決めるもんじゃない。自分で決めて、どう、輪を作るかだ。あいつはそんな事で来やしないさ。ほっとけ」と少しムッとしていた。
「にしても仮にも闇のゲームだぞ、これ。そんなグレーゾーンで手に入れた金と名誉で自分に弾みをつけて政治家に立候補するとか、めちゃくちゃだろ」
呆れる順子。
ごもっともである。


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