
第三十九章 やばい奴ら 四話
「あ~君たち。あの子の言ってる事は気にしなくていいよ~」
そこで、大分間の抜けた声がしてきた。
そう言ってきたのは、九番の遥。
第一印象でもそうだが、遥は男性が鼻の下を伸ばしそうなくらい、色香がある。
「あ、いえ。私たちなら大丈夫ですから」
そこで、聖加が律儀に言葉を交わす。
すると、どこか艶笑する遥。
「そう? なら良いんだけど。あ、そうだ。君スタイル良いね。良かったらここに連絡してよ。いつでも待ってるから♪」
色気のある含みで、そう言いながら、聖加にある名刺を渡した。
「君にも。待ってるね♪」
「「ん? ……えっ⁉」」
一驚する理亜と聖加は思わずシンクロする。
「どうしたの?」
そこで、驚いてから硬直し続ける理亜たちに、何があったのか気になったエノアは、その名刺を見てみると、思わず仰天する。
「えっ⁉」
「なっ⁉」
奏根と順子も似たようなリアクション。
「あの人、風俗関係者だよ」
かなり引きつった表情になりながら、戦々恐々と口にする理亜。
聖加も恐怖で体が震えてしまう。
その名刺は風俗嬢、スカウトの名刺だった。
「おいおい。あそこのチーム、やばい奴らの巣窟じゃないか?」
奏根が恐々として口にすると、理亜たちは小刻みに何度も頷く。
「ハハハッ。どうやら、強烈なアプローチがあったようですね」
「ええ。あの接触だけで、一回戦のチームは、戦意を失い、真っ当な試合になどなりませんでしたし、少し不安ですね」
ベンチに居る銅羅が愉快な見世物でも見ているかのように笑うと、イリアスは少々、不安な面持ちになる。
「安心してください。あの程度の修羅場など、シャルトエキゾチックチームの皆さんは掻い潜ってきました。奇抜な選手たちですし、その分、芯も強固なはずです」
「フッ、言われて見ればそうですね」
銅羅の優々な言葉に、納得したイリアスだった。
「ねえ監督。ダイオンジチームの監督が死んだって本当?」
「……ええ。私は葬儀にも参列しました」
赤のユニフォーム、六番の選手、キャップの帽子を被り、ボーイッシュな顔つき。両手ポケットに手を入れ、パット見た感じ、男の子に見えるが、とても愛くるしい可愛さがあるその女子は、風船ガムを膨らませながら呑気に口にすると、銅羅は寂しそうな面持ちになる。
「……そっか」
赤のユニフォーム六番、ポジション、パワーフォワード、身長百六十七センチ、体重五十三キロ、常に眠そうな糸目で、グレーのショートヘアーな女子、遷宮代野。
代野は、銅羅の気持ちに寄り添うようにしてぼやく様に言う。
「どうしてそんな事を今?」
そこで、銅羅が少し気になり、何気なく聞く。
「いやさあ、あの旧ダイオンジチームは、恩師の死を乗り越えられたのかなって、少し心配でさ。私だったら今頃、何してたか分かんないし、想像もつかないしさ」
顔色を少し濁りかかったような表情を見せる代野。
「そうですね。貴方たちにとって、私がそこまで掛け替えのない存在と迂遠に言って下さることは感謝します。しかし、理由がどうであれ、敗れたものの選手の無念を背負っている以上、もう、後には引けないのです。旧ダイオンジチームの皆さんも、引きづってでも、成就させたい何かがある。それは達樹さんも同じです。だから託された物が大きいと分かっているからこそ、彼女たちは立ち上がります。それが貴方たちにも出来る、と私は信じています」
「……監督」
銅羅は大人びた相好で、何の躊躇もなくそう言うと、イリアスたちは、銅羅の居る横を向きながら、少し涙目になっていた。
「さあ、始まりますよ」
気を取り直す見たいに、声音に気合を入れる銅羅。
そして、ジャンプボールがスタートすると、同時に会場中にブザーが鳴る。


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