
第四十章 見切れるか? 二話
「え? 何故です?」
「貴重なタイムアウトだからだよ。せめて向こうのスキルを引き出してからか、四分後にタイムアウトを取りな」
「ん?」
冷静な由紀子の言葉に怪訝な面持ちになる豪真。
「あんた焦りすぎだよ。いいかい、一クォータに二回しかないタイムアウトだよ。いちいち、一つのプレーに驚いてタイムアウト取ってたらキリがない。それは向こうも承知の上だ。だからこそ一クォータ―ずつ、出し惜しみでもしながら、こっちがタイムアウト使い切ってから畳みかけてスキルを使ってくるかもしれない。最低でも四分後だ。時間と得点を計算しながらタイムアウトを取るのも重要なんだ。私の言っている意味分かるかい?」
若干呆れながら淡々と口にする由紀子の言葉に、すっかり縮こまってしまう豪真。
会場中に響き渡る歓声を背中で受け止めながら、理亜はエノアにパスを出す。
エノアはドリブルでハーフコートまで走った。
飛翔は鋭い目つきでエノアを観察する。
そして、ある程度引き付けてから、姿勢を少し丸め、まるで居合術でもするかのような構えになる。
飛翔の周囲だけ、空気が変わる。
「……明鏡止水、抜刀! 一の太刀!」
達人の息に達した武者のような気迫。
緩やかに見えて、瞬足の動き。
飛翔はエノアを横切る際、右手を振るい、エノアのボールをカットする。
いつ横切ったかも分からないまま、エノアはドリブルしていたボールをカットされ、飛翔はボールを持って、理亜たちのリングに向かい、そのままダンクで決めた。
点数が0対四。
理亜たちは無得点。
エンジョー、フ―、エンジョー、ビター。
豪真はと言うと、相変わらず、素晴らしいと思えるプレーに、感情が隠しきれず、謎のオペラが脳裏を過りながら、のけぞり、悦に入った状態になる。
「豪真。タイムアウト取りな」
透かさず、由紀子が豪真の頭をハリセンでシバク。
「えっ⁉ でもさっき四分経ってからって」
「状況が変わったんだ。このまま後二分も待ってたら、十点差も付けられる可能性もある」
「は、はい!」
由紀子が渋い表情で顎を摘まみながら、危険な感じをダイレクトに感じた。
それは、スタメンである理亜たちも一緒。
エノアは続けて点を取られた事に、悔しそうな面持ちでベンチに戻る。
「ねえ! 見たあれ⁉ 明鏡止水……抜刀、だってさ! カッコいい!」
「このあんぽんたん! この状況ではしゃいでんじゃねえ!」
ベンチに戻った途端、理亜は飛翔のモノマネをし、テンションが上がっていた。
奏根は理亜の頭をハリセンでシバく。
「はあー、とにかく皆、由紀子さんの話を聞いてくれ」
呆れた豪真は深い溜息を吐くと、由紀子に話を振る。
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