
第四十章 見切れるか? 三話
「あの五番のオフェンスとディフェンス。瞬時に消えたように見せた手品。あんたら分かったかい?」
「いえ、全然。それに一昨日、向こうのキャプテンも似た様な事してきて、理亜ちゃんは負けたんです」
エノアが浮かない面持ちで口にする。
「まあ、あれは初見殺しとも言えるだろうね。かと言って対策も取れず、看過すればゲームオーバーだ」
「じゃあ、どうすれば?」
由紀子は敵チームの五番を見ながら険しい表情で口にすると、高貴が居てもたっても居られない様な面持ちになる。
他の皆も似たような面持ち。
「あれはね、視覚を使ったんだよ」
「え? 視覚?」
由紀子の言葉に、怪訝な面持ちになる全員。
「近くにあるものほど速く動いて見え、遠くにあるものほど遅く動いて見える、これは見かけの角運動量。遠い所や近い場所で同じ速度の物体を目にしても、差が出るのは正にそれなのさ。人間の目は、近い程、捉えにくく見え、遠くから見る物は目で追える。まあ、日常生活でそこまで考える奴は、そうは居ないだろうけどね」
「で、でも、私たち、遠くから見てたけど、全然見えなかったじゃん⁉」
淡々と話す由紀子の言葉から動揺の色を伺えてしまう静香は、少しあたふたしていた。
「単純な話さ、あの五番の動きが尋常じゃないくらい早いんだ。近くから所か、遠くからでも見えないくらいのスピード。けどそれも短距離だけだ。長距離まで持続できないからね」
「ディフェンスはそれで説明がつくかもしれないけど、オフェンスは? あの抜刀って時のオフェンスじゃ、足音所かボールの弾む音すら聞こえないのに」
順子がまだ腑に落ちない点を口にすると、理亜たちは真剣な面持ちでコクコクと頷く。
「そのネタも私は掴んだ」
「「えっ⁉」」
自慢げに語る由紀子に理亜たちは一驚する。
「で⁉ で⁉ どんなネタなの⁉」
理亜が目をキラキラ光らせながら、由紀子に迫る。
「……おしえなーい」
剽軽な面持ちで口にする由紀子に全員はズッコケる。
「……そんな」
両手をコートに付け、ガックシしている理亜たち。
「少しはあんたらで考えな。教えてばっかりじゃ成長しないしね。それにフェアじゃない」
「う、言い返す言葉もないです」
呆れながら口にする由紀子に、加奈は面目ない見たいな形相になる。
理亜たちもそれ以上何も言えなかった。
仕方なく、コートに戻る理亜たち。
「そうだ。エノア。ちょっとおいで」
「え? はい」
由紀子が何かを思い出したみたいにエノアを手招きして呼ぶと、由紀子に寄るエノア。
「あんた、どう思ったんだい? 相手のオフェンス」
「うーん。正直何が何だかさっぱりです。一昨日、理亜ちゃんと対戦したイリアスさんと似た様な形でしたが、足音もボールの弾む音すら聞こえないんじゃ、対策のしおうが」
落ち込んでいくエノア。
エノアは、自分がチームに貢献しているのか、それすらも不安だった。
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