
第四十章 見切れるか? 七話
奏根がエノアにパスを出すと、既にハーフコートに居たエノアと飛翔。
飛翔はまたもや身を丸め、居合斬りの様なか前になる。
危険と判断したエノアは、すぐに聖加にパスを出す。
「明鏡止水、抜刀、一の太刀!」
バン!
パスを出した所を、空でカットされた。
それに気付いた理亜が飛翔のディフェンスに回る。
スリーポイントラインにまで近付いてきた、飛翔を、絶対にフリースローラインにまで居れないよう、意識を集中する理亜。
そこで、またもや強引に斜め前にドリブルしてくる飛翔。
理亜は必ず飛翔の前に出て、徹底したディフェンスを見せる。
「無駄だ……明鏡止水、抜刀、二の太刀!」
威厳を思わせる熱と冷気を帯びた声音でそう言うと、飛翔は、インサイドアウトで左の内側に行くと見せかけ、右の外側に移動する。
そして、左に誘われた理亜を置いていかれる様に、またもや音と姿を消し、右サイドからレイアップシュートを決める。
「駄目だ」
脱力する見たいに悔しがる理亜。
イリアスと殆ど似たプレイをしているのも気になるが、それ以上に、あれをどうやって防げばいいのだろうか。
だが、それでも突破口が少し見えてきた理亜とエノアは、互いに見合わせ力強く頷く。
これで点数は三対十。
第一クウォーター、残り四分五十二秒。
「まだまだこれからだ! オフェンス一本取るぞ!」
「「おう!」」
奏根が理亜たちを鼓舞すると、理亜たちも覇気のある声で答える。
「飛翔さんはずば抜けた洞察力、瞬発力、応用力、その義を収めた、言わば武士。家系がら、幼少期から鍛錬しただけあり、今では達人の息に達してます」
「ええ。流石は第二の師匠です」
銅羅が飛翔を称賛していると、その横で、安堵して見ていたイリアス。
「ねえ監督。前々から思ってたけど、明鏡止水、抜刀する時ってさ、キャプテンもそうだけど、ちょっと、孤独感があるよね」
風船ガムを膨らまし、少し寂しげに口にする代野。
「まあ、極めた者の宿命の様なものです。しかし、それでも領域の壁を破砕し、追随する者が居る限り、決して、孤独にはなりませんよ。代野さんや他の皆さんも、イリスさんたちに匹敵する程の実力者です。似た実力者同士、分かち合える。そうではないですか?」
優雅に口にする銅羅の言葉に、代野は少し恥ずかしくなりながらも「ま、まあね」と頬を赤くさせ口にする。
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