
第四十一章 ジャスティス 八話
「ほらっ、馬鹿な事言ってないで試合に集中しな。理亜。自覚ないようだから言っておくけど、あんたエースなんだよ。もっとしっかりしな」
「うわっ!」
気合をいれるため、理亜のお尻を強く叩く由紀子。
理亜は「いててて」と言いながら、追い打ちに奏根が、背中を叩く。
どこか安心した理亜。
仲間の手が、ここまで暖かいものだとは、とつい思ってしまう。
八対十四から再開され、第一クウォーターの残り時間は、三分七秒。
エノアがボールを運んでいくと、待ち受けるは飛翔。
またカットされる事を恐れたエノアは、透かさず、奏根にパスを出す。
すると、遥が迫ってきた。
「目にもの見せてやる」
奏根は、ハーフコートで止まると、ボールを自分の目にまで放り投げる。
「サイクロンシュート!」
竜巻を発生させ、ボールを包むようにして、竜巻が敵チームのリングに向かって行く。
「よし!」
豪真が決まったであろう、と思い思わずガッツポーズを取る。
とぐろを巻く様にして、敵チームのリングに向かって行くボール。
そこで、飛翔が、腰に刀が収まっているのを引き抜くかの様な構えになる。
「無駄だ。明鏡止水、抜刀、一の太刀!」
空中に向け、飛び上がった飛翔、
そして、薙ぎ払うようにして、竜巻を弾き、無力化させた。
「なっ⁉」
それを目にした奏根は、目をギョッとさせる。
飛翔がかき消した竜巻の中から、出てきたボールを空中で掴むと、遥にパスを出す。
既にスリーポイントラインに居た遥はパスを受け取ると、スリーポイントシュートを打ち、決めてしまう。
これで点数は八対十七。
九点差を付けられてしまった。
「エノア。もう一回、俺にパスくれ」
「え、うん、分かった」
奏根は、落ち込んでなどおらず、前向きな姿勢でエノアにそう言うと、エノアは少し意表を突かれたが、すぐに頷く。
そして、エノアがすぐ様、奏根にパスを出す。
「何度やっても結果は同じよ~」
奏根に艶笑に笑いを向ける遥。
「どうかな」
奏根は、ハーフラインとスリーポイントラインの間で遥とマッチアップすると、ドリブルで前に行くと見せかけ、すぐに後ろに下がった。
緩急も付けられ、遥は攻めあぐむ。
またもや奏根は、サイクロンシュートを打つ構えになる。
「俺は、俺のやり方で、エクストラロードを超える!」
力強いその言葉に続く様に、またもや自身の目にまでボールを放り投げ、身体を大きく捩じり、グルリと三百六十度回る。
竜巻を発生させ、誰もが先程と同じく、ボールを竜巻の中に閉じ込める物だとばかり思っていたが。
「――ッ!」
ベンチでそれを目の当たりにした銅羅は目を剥く。
奏根は、ボールだけでなく、自身も竜巻の中に入り、ボール事、自分の身体共々、敵チームのリングに向かって行く。
「明鏡止水、抜刀、一の太刀!」
透かさず、飛翔は奏根の竜巻をかき消したが、ボールを手にしていた奏根自身には、その剣は届ていなかった。
「貰った!」
奏根が、ダンクする構えになる。
リングはすぐ目の前。
決まったか?
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