
第四十一章 ジャスティス 十話
試合は動き、第一クウォーターも、残り一分二十六秒。
せめてもう一点、取りたかった理亜たちは、最終クウォーター並みに、必死な形相をしていた。
次は相手のオフェンス。
つまり、飛翔の明鏡止水、抜刀が炸裂する時だった。
だが、そこでアクシデントが起きる。
「パース!」
「えっ、あ、ええ」
なんと、味方である遥に、ジャスティス・マイ・フレンドを発動させた木佐。
イリアスたちは一驚する。
「待て! 木佐!」
木佐がドリブルで理亜たちのコートに向かって行くのを、後ろから声をかけ、止めようとする飛翔。
しかし、木佐は止まらない。
それどころか、私が主役だ! と言わんばかりな自信に満ちた、表情をしていた。
すぐに奏根と聖加がディフェンスに入り、木佐の前で立ち塞がる。
しかし、木佐は敵である聖加にパスを出すと、すぐに「パース!」と口にし聖加は、我を見失い、横切る木佐にパスを出してしまった。
思わず銅羅も立ち上がる。
「行かせるか!」
そこで、順子が待ったをかける様に、リングの下で待ち構えていた。
知留も加わり、順子にスクリーンをかけようとする。
見かけ以上にパワーのあるスクリーンをしてくる知留。
順子もパワーで勝負するが、全くの互角。
それには豪真や由紀子も驚く。
「フハハハハッ! お膳立てご苦労! ここからが私の真骨頂! 政治家への道が今、開かれる!」
声高々に威勢よくそう言うと、今度はダンクしようとする構えになる木佐。
「まずい!」
芙美が思わず声を上げる。
ダンクなら届きさえすれば誰でも決められる、と言う印象の人が多いかもしれないが、ところがどっこい、意外と決めにくく、事故に遭うケースもあるのだ。
したがって……。
バコン!。
ぐきっ。
「ギャッ!」
誰もが決まると思った次の瞬間、木佐はダンクするはずだったボールを見事外し、それどころか、手首をリングの輪っかにぶつけてしまい、思わず呻き声を上げる。
着地も失敗し、横から落ちる木佐。
「ぐぎぎぎぎっ」
「ピー! レフリータイム!」
木佐が手首を抑えかなり痛がっているのを目にした審判のお兄さんが、急いでそう宣言すると、アサルトハイドチーム全員が木佐に駆け寄る。
理亜たちも近くにまで駆け寄る。
「木佐さん!」
「う、ううぅ」
銅羅が声をかけるが、木佐は、青く腫れあがった手首を抑えてうなだれていた。
結果、木佐は手首の骨に罅が入ってしまい、ドクターストップとなってしまった。
「うっ、ううぅ。私の政治家の、道があぁ~」
「ちゃんと百億持って戻ってくるから、安心してなさ~い」
二名の救護係の人に、タンカーで運ばれながらも、木佐は無念と遺恨を残すのを悔しがるようにして、天井を見上げながら嘆く事しか出来なかった。
アサルトハイドチームの二名のベンチメンバーに、銅羅が見ててあげて欲しいと、頼むと、その二人は付き添いとして木佐に付いていく。
遥はまったりした様子で木佐を見送る。
因みに、ボールは、木佐が外し、外野に出てしまったため、理亜たちのボールから始まる。
メンバーチェンジで、代野が加わる。
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