クリーチャープレイバスケットボール 第四二章 大門の暗躍 一話

 「宜しくお願いします。代野さん」

 「おーけー」

 謹んで見送る銅羅に、代野は呑気に返す。

 「頼んだよ。代野」

 「うん」

 賀古がフレンドリーにそう言うと、ハイタッチする代野。

 他のメンバーともハイタッチして、試合は再開される。

 エノアにボールが渡ると、飛翔が問答無用で突っ込んでくる。

 まだハーフラインにも迫っていなかったエノアは一驚する。

 エノアはすぐさま聖加にパスを出す。

 「完全に予防線を張られているね」

 「ええ。向こうの五番は、エクストラロードでもないのにあのスキル。油断なりません」

 由紀子と豪真が眉を顰め口にする。

 聖加はパスを貰うと、マッチアップしてくる代野を抜こうと、フロントチェンジで右手にボールを持ち替えると、すぐさまロールターンで左から抜こうとした。

 それをしっかり意識していた代野は、聖加を抜かせない。

 しかし、聖加は挫けず、レッグスルーで左手にボールを持ち替え、強引に左斜め前に向かって行く。

 ハーフラインにまで近付くと、代野を振り切れなかった聖加は、理亜にパスを出す。

 右サイドのスリーポイントラインでパスを受け取った理亜は、左に行くとフェイントすると、賀古は釣られてしまい、思い切って右側から抜いた理亜。

 すると、ヘルプで遥が理亜の前に出る。

 理亜はフリーとなった奏根にパスを出す。

 右のアウトサイドに居た奏根は、再び、サイクロンシュートネクストを使った。

 とぐろを巻く様にしてボールを握っていた奏根は竜巻の中でシュートを決めようと意気込んでいた。

 「明鏡止水、抜刀、一の太刀!」

 エノアのスクリーンを掻い潜り、またもや目にも止まらぬスピードで、居合術の要領で、竜巻を平手打ちで薙ぎ払うようにして、竜巻を打ち消した飛翔。

 飛翔は、宙で奏根の手にしているボールを奪おうとした。 

 しかし、奏根はボールを抱きかかえ、ボールに手出しさせない状態を作った。

 流石の飛翔でも手が出せないため、断念する。

 奏根がそのまま、リングにダンクでボールを叩きつける。

 十四対十七になり、ここで、第一クウォーターが終了となった。

 観客たちは既に大満足の様に、歓喜の声で、会場が満ちていた。

 「はあー。はあー」

 「大丈夫か?」

 ベンチに戻ってくるなり、椅子に手をかけ、憔悴していた順子。

 大量の汗を流していた。

 「え? 順ちゃん?」

 まさか、第一クウォーターで、ここまで体力を消耗していた事に、静香は、ありえない物でも見るかのように驚いていた。

 「悪いな。想像していたより、あの娘のディフェンスが半端なくてさ」

 疲れ切った表情で知留を見る順子。

 理亜たちも、改めて知留を見ても、順子が苦戦するほど、パワーがあるとは思えない。

 痩躯な体格なはずなのに、と順子は自分の認識を改める。

 「第二クウォーターは、高貴。任せたぞ」

 「はい!」

 豪真の決断に高貴が覇気のある声で口にする。

 順子も異議なし、と言った様子で「頼むわ」と疲れながらも高貴とハイタッチする。

 「第二クウォーターからは、間違いなく、向こうは最低でも一人はエクストラロードを使ってくるよ」

 渋い面持ちで口にする由紀子に、一同は、どうしたもんか、と思考顔になる。

 果たして、理亜たちは、格上相手にどう食らいついていくのか?

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