「宜しくお願いします。代野さん」
「おーけー」
謹んで見送る銅羅に、代野は呑気に返す。
「頼んだよ。代野」
「うん」
賀古がフレンドリーにそう言うと、ハイタッチする代野。
他のメンバーともハイタッチして、試合は再開される。
エノアにボールが渡ると、飛翔が問答無用で突っ込んでくる。
まだハーフラインにも迫っていなかったエノアは一驚する。
エノアはすぐさま聖加にパスを出す。
「完全に予防線を張られているね」
「ええ。向こうの五番は、エクストラロードでもないのにあのスキル。油断なりません」
由紀子と豪真が眉を顰め口にする。
聖加はパスを貰うと、マッチアップしてくる代野を抜こうと、フロントチェンジで右手にボールを持ち替えると、すぐさまロールターンで左から抜こうとした。
それをしっかり意識していた代野は、聖加を抜かせない。
しかし、聖加は挫けず、レッグスルーで左手にボールを持ち替え、強引に左斜め前に向かって行く。
ハーフラインにまで近付くと、代野を振り切れなかった聖加は、理亜にパスを出す。
右サイドのスリーポイントラインでパスを受け取った理亜は、左に行くとフェイントすると、賀古は釣られてしまい、思い切って右側から抜いた理亜。
すると、ヘルプで遥が理亜の前に出る。
理亜はフリーとなった奏根にパスを出す。
右のアウトサイドに居た奏根は、再び、サイクロンシュートネクストを使った。
とぐろを巻く様にしてボールを握っていた奏根は竜巻の中でシュートを決めようと意気込んでいた。
「明鏡止水、抜刀、一の太刀!」
エノアのスクリーンを掻い潜り、またもや目にも止まらぬスピードで、居合術の要領で、竜巻を平手打ちで薙ぎ払うようにして、竜巻を打ち消した飛翔。
飛翔は、宙で奏根の手にしているボールを奪おうとした。
しかし、奏根はボールを抱きかかえ、ボールに手出しさせない状態を作った。
流石の飛翔でも手が出せないため、断念する。
奏根がそのまま、リングにダンクでボールを叩きつける。
十四対十七になり、ここで、第一クウォーターが終了となった。
観客たちは既に大満足の様に、歓喜の声で、会場が満ちていた。
「はあー。はあー」
「大丈夫か?」
ベンチに戻ってくるなり、椅子に手をかけ、憔悴していた順子。
大量の汗を流していた。
「え? 順ちゃん?」
まさか、第一クウォーターで、ここまで体力を消耗していた事に、静香は、ありえない物でも見るかのように驚いていた。
「悪いな。想像していたより、あの娘のディフェンスが半端なくてさ」
疲れ切った表情で知留を見る順子。
理亜たちも、改めて知留を見ても、順子が苦戦するほど、パワーがあるとは思えない。
痩躯な体格なはずなのに、と順子は自分の認識を改める。
「第二クウォーターは、高貴。任せたぞ」
「はい!」
豪真の決断に高貴が覇気のある声で口にする。
順子も異議なし、と言った様子で「頼むわ」と疲れながらも高貴とハイタッチする。
「第二クウォーターからは、間違いなく、向こうは最低でも一人はエクストラロードを使ってくるよ」
渋い面持ちで口にする由紀子に、一同は、どうしたもんか、と思考顔になる。
果たして、理亜たちは、格上相手にどう食らいついていくのか?
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