
第四二章 大門の暗躍 三話
話は遡り、ツエルブが明人に胸を突き刺され、ツエルブが、病院で手術を受けようとする、少し前。
ピンポーン。
竜宮城病院に、一人の男が、豪真の元を訪ねていた。
「誰だ⁉」
「うわっ!」
相も変わらず、病院に来る客を警戒し、モデルガンで脅しにかかる豪真。
扉を勢い良く開けられ、銃口を向けられたものだから、善悟は酷く狼狽する。
「まてまて、俺たちは人間同士、対話できるじゃないか? 持ち味を生かせなくてどうすんだよ」
慌てながらも、必死になって豪真を説得する善悟。
「……それもそうだな」
腑に落ちたみたいな少し、警戒しながらも、モデルガンを懐にしまう豪真。
すると。
「手を挙げろ! 銃刀法違反、並びに脅迫罪の現行犯で逮捕する!」
「なっ⁉」
今度は、善悟が、本物の拳銃を懐から早く取り出し、銃口を豪真に向ける。
形勢逆転でもされたかのように、今度は豪真が両腕を高く上げ酷く取り乱す。
「まてまて、私たちは同じ穴の狢だ。人類誰しも変な所はあっても仕方ないだろ? だから、その、……裸にならないか?」
動揺しまくる豪真は、支離滅裂な言動をする。
「はあっ⁉ アホな事言ってないで、さっきの銃、寄こしやがれ」
「いや、これはただの、も、モデルガンだが」
威嚇してくる善悟に、動揺しながらも、モデルガンをゆっくり取り出し、手渡す豪真。
そして、豪真が取りしたのが、モデルガンだと言う事を理解した善悟は、大きな溜息を吐いて銃口を下げ、拳銃を懐にしまう。
それを見て安堵した豪真は、額からかいた冷や汗を手の甲で拭う。
「あんた、今回は厳重注意で留めておくけど、こんな事したら、迷惑行為で、マジで裁判にかけられるぞ?」
「私にも並々ならぬ事情があるのだ。それより、何の用だ? その拳銃のモデルを見る限り、警察と言う事は分かるが」
「そうだった! 変人のせいで、用件忘れる所だったぜ」
「……失礼な奴だな」
「あんたに言われたくないけどな」
呆れながら、警察手帳を豪真に見せる善悟。
豪真は、善悟が刑事である事を確認すると、再び同じ質問をする。
「実は、あんたに頼みがあるんだ」
「頼み?」
気持ちを切り替えた善悟は、時間を気にしながら口にする。
豪真は、何かただ事ではない事を察すると、面倒ごとに巻き込まれるのでは? と警戒する。
「あんた、ペナルトギアを扱ってるだろ?」
「――! 何故それを?」
真剣な眼差しで、善悟がそう聞いてくる。
ペナルトギアを知っている事に驚く豪真。
そして、豪真は訝しい瞳を善悟に向ける。
「実は、クリプバの選手と監督リストに、あんたの名前があった。医師である事はその時に確認済みだし、あんたが義足や義手を患者に提供している事も、SNSの投稿で、それも確認済みだ。けど、ペナルトギアに関しては、一切ネット上で呟かれていなかった。だから推測したんだ。クリプバに関与し、義足や義手を扱っている医者なら、ペナルトギアの製造も可能じゃないかってな」
「……なるほどな。それで、ペナルトギアを一体何に使うつもりだ? 言っておくが、私は容易にペナルトギアを提供する気はない」
真摯に説明する善悟の言葉で、今以上に警戒する豪真。
豪真からしてみれば、ペナルトギアは、初期状態でも身体能力や、感覚器官を向上する事が出来る。ましてやエクストラロードに覚醒すれば、どんな事に、悪用されたとあっては、見過ごすことも出来ないし、責任問題にもなりかねない。
だからこそ、豪真は、ペナルトギアを患者に施す際、その患者を見極めなければならなかったのだ。
その言葉を待っていた、と言わんばかりに、本題に入ろうとする善悟。
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