クリーチャープレイバスケットボール 第四二章 大門の暗躍 四話

第四二章 大門の暗躍 四話

 「いや、ペナルトギアが欲しいんじゃなくて、精巧に作られたペナルトギアが欲しいんだ」

 「ん? どう言う事だ。何故、本物ではなく、模倣品を欲しがる?」

 怪訝な面持ちで、訳が分からない豪真。

 「さっき、ある凶悪犯罪者が胸をナイフで突き刺された状態で逮捕され、警察病院に搬送されている。そこで驚かされたのが、レントゲンを撮った左足が、義足だと言う事だ。その凶悪犯は身体能力が尋常ではない事が、さっき警察官が目撃者二人の女子から、軽い聴取した事で分かった。だから俺たちは、あいつの義足はペナルトギアだと言う事を確信した」

 善悟が少し急ぎながら説明する。

 豪真も一回で理解しようと、真剣に聞き入る。

 そして、話は続く。

 「その犯人は、前科があり、過去の裁判で、責任能力が無く、無罪になってる。言わば冤罪になってるんだ」

 「そんな馬鹿な」

 信じられないと言う様子になる豪真。

 「これを聞いたあんたなら、いくら変人でも分かるだろ? ペナルトギアを奴に装着させたままだと、また警察でも手が付けられない犯罪を平気で犯す。今、手術を受けようとしている奴のペナルトギアを偽物とすり替え、人並みの身体にする必要がある」

 「だが、気付いた時に、本物のペナルトギアを装着されれば、結局、努力も水の泡だぞ」

 かなり落ち着きがなく話す善悟は急いでいた。

 手術が始まる前に、豪真に手術を任せ、その隙に、ペナルトギアを模倣品のペナルトギアを装着させると言う、算段。

 だが、豪真の言う事も、最もで、下手をすれば、それこそ徒労で終わるかもしれない。

 「いや、これを考えたのは俺じゃなくて、俺の相棒だ。なんか、「奴が偽物とすり替えられた足の時にでも、と思い、これは念のための処置だ」てな。俺にもあいつが何をしたいのか良く分からない」

 包み隠さず吐露する善悟の言葉は、嘘偽りない。

 それは、豪真も良く分かっていた。

 そのプランに、乗るべきか、反るべきか。

 「……分かった。協力しよう」

 「ほんとか⁉」

 「ああ。正直、犯罪に関しては、こっちは素人だしな。専門家が何かを企てているなら、むしろ安心できる。そいつが模倣品のペナルトギアを付けている間に、どう勝負を決めるかは分からんが、一市民として、警察には極力協力するつもりだ」

 豪真が力んでそう言うと、ホッと、胸を撫で下ろす善悟。

 「……ご協力、感謝します」

 そこで、善悟は誠意を込め、敬礼する。

 「とにかく全は急げだ。そいつが手術を受ける前に私が変わり、その隙に、模倣品の精巧に作られたペナルトギアを装着しよう」

 豪真は少しにこやかにそう言うと、善悟は、ツエルブの足のサイズや長さを事細かく話し、それに合う模倣品の試作段階のペナルトギアを用意する豪真。

 一行は、警察病院に着くなり、急いで輝美が待っている、オペ室前にやってくる。

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