
第四二章 大門の暗躍 五話
輝美が現在の容態と、ツエルブのカルテを豪真に渡すと、容態を理解した豪真は、服を着替え、オペ室に入ろうとする。
その際、輝美と善悟が「宜しくお願いします」と言うと、深々と頭を下げ、後ろを向きながら、豪真は「任せておけ」と力強く言う。
そして、オペ室に入り、既に全身麻酔で眠って、拘束具を付けられた、ツエルブを手術する。
計画通り、左足のペナルトギアを、偽物の精巧に作られたペナルトギアを装着させた。
その間、輝美と善悟はとある話し合いがされていた。
その表情は、真剣そのもの。
「どうする輝美? この事が所長にバレたら、始末書やクビじゃ済まないぜ」
「分かってる。だからこそ、あの計画を遂行するか悩んでいる。所長は俺たちに取って親同然だ。裏切る事になるが、あいつをこのまま野放しにすれば、また多くの被害が出る」
「計画ってなんだ?」
不可思議な面持ちになる善悟。
「時期が来たら話す。まだ具体案が固まっていないしな。すまないな。お前まで巻き込んで」
どこか後ろめたさを感じていた輝美。
「そんな事、気にすんなよ。俺たちはこの事件を追ってた時から一蓮托生なんだろ?」
「……ああ。そうだな」
善悟はニンマリ笑いながら、良き友人だと言う事を友愛をリアクションで表現する。
その暖かさに、輝美は安堵する。
「んで、所長にはこの事どう言う?」
「まだ伏せておくつもりだ。この事件が終わってから提言する」
「そっか……。はあー。あと少しか、俺らの刑事生活も」
「なんか心残りでもあるのか?」
緊張の糸が切れたみたいに、善悟が立て掛けられている椅子に、ドスッと座る。
輝美も横に並ぶように座り、話を振る。
「いやなに、ただまだ未解決の事件が残ってるって思ってな。俺の両親は飲酒運転の過失運転致死で亡くなった。それに納得できなくて、正義感の強い刑事を目指した。少しでも理不尽な事件を引き起こせない様な、予防線でも張れる刑事でありたいと願いながら」
「……そっか」
善悟は俯きながら、苦虫を嚙み潰したような暗い表情で話し始める。
それを隣で聞いていた輝美は、立派な人間な善悟を、どこか誇らしく思いながらも、お悔やみの念も抱いた。
「お前はどうして、刑事何て目指したんだ?」
「そういやあ、俺たち、長年組んでたのに、刑事を目指した理由について話し合ってなかったな。やっぱり、どこか恥ずかしかったんだろうな」
「おい、はぐらかすなよ」
少し気恥ずかしそうな想いを胸にしまいながら、黄昏に浸る様な目で天井を見上げる輝美に、善悟は肘でグイグイ輝美の腕を押し付けながら促す。
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