クリーチャープレイバスケットボール 第四二章 大門の暗躍 七話

第四二章 大門の暗躍 七話

 「だけどさ、本物のナイフを置いておくのはまずいんじゃないか? せめてゴム製のナイフとかさ」

 一部、異議を申し立てる善悟。

「いや、出来るだけリアルに再現したい。それに偽物のナイフを手にしていた加害者を射殺した、なんて話を、世間や警察の上層部たちが納得するはずがない。間違いなく非難の声や、誹謗中傷が飛び交う。出来るだけ、砂川警察署の評判は落としたくないんだ」

 俯きながら、少し暗い雰囲気を醸し出す輝美。

 善悟も納得し、一か八かの賭けに、覚悟を決める表情をする。

 「……分かったよ。んじゃ、行くとしますか。地獄の閻魔の居る所に」

 「頼んだぞ、相棒」

 二人は少し明るくなり、念入りな作戦を車内で練っていた。

 そして、時は戻り、ツエルブがペナルトギアが偽物だと分かり、怒りで打ち震えていると、徐々にその怒りが静まっていく。

 いや、違う。

 その怒りを、手にしているナイフに全て載せたのだ。

 凶変した相好で、輝美と善悟に走りかかってくるツエルブ。

 すぐに、輝美と善悟は発砲する。

 輝美と善悟は、ペナルトギアを失ったツエルブは普通の人間と同じ身体能力、と思い、絶対に勝てると言う思いを、心の隅で思っていた。

 それがあっさり意味をなさないかのように、なんと、ツエルブは輝美と善悟の弾を左右に移動しながら躱す。

 まるで、百戦錬磨の猛獣が、血と鉛を嗅ぎ付けているみたいに、動きに敏感の様に、全てを手玉にしているかのように。

 ペナルトギアが無くても、尋常でない動きに翻弄される輝美と善悟。

 焦慮しながらも、狙いを定めるが、癖のある動きが、判断を鈍らせる。

 気でも触れたかのように、善悟に近付いたツエルブは、横一文字にナイフを振るう。

 「くっ!」

 一歩足を引き、ギリギリで躱す善悟。

 すると、善悟はツエルブから距離を取り、グルンと地面を転がり、受け身を取る様にして、しゃがんだ体制になると、透かさず、発砲する。

 ツエルブの額に向け撃った弾。

 それを横に首を傾げ、躱すツエルブ。

 ツエルブは、ナイフを垂直にして善悟の顔面向け投げつけた。

 体を無理に逸らし、ギリギリで躱す善悟。

 すると、ツエルブはいつの間にか善悟の懐に入り、顔面を片手で鷲掴みにし、地面に叩きつけると同時に、宙に投げつけていたナイフを掴む。

 「逝けやあーー!」

 怒号の様に喚きながら右手に手にしていたナイフを、善悟の心臓に突き刺そうとしたツエルブ。

 輝美は撃ちたかったが、ライトがツエルブに当たっておらず、上手く狙いを定められなかった。

 銃に頼る事を止めた輝美は、必死の形相で善悟を助けようとツエルブに突進する。

 ツエルブのナイフが善悟の心臓に突き刺さるのが先か? 輝美が突き飛ばすのが先か?

 窮地に立たされている善悟は、果たして……。

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